晴れて気持ちの良い大阪です。
公園ではたくさんの子どもたちが走り回っていました。 ^_^
坂岡洋子『老前整理』徳間書店 2011年より
予期せぬ素敵な再会が待っている!?
講座で繰り返しお伝えするのは、「使うものと使えるものは違う」ということです。
これはまだ使えるけど・・・ではなく、本当に使うのかどうかの取捨選択をする。老前整理はひとつひとつのモノに関して、モノと自分の頭と心に問いを投げかけて答えを見出す作業なのです。
探し物が減るとか、掃除が楽になるという、目に見える効果のもっと奥深くにあるのは自分自身の人生とおそるおそる、あらためて向き合うというかけがえのない時間を持つことなのかもしれません。
それは抗生物質のような薬による効能ではありませんし、私自身も能書きを謳いたくはありません。
自分はいま〇〇歳だ。一〇年前、二〇年前にこれを買ったときの自分とは違っている。それでも本当にこれを使うのか、と。
場合によっては楽しい思い出ではなく、つらい思い出がこみあげてくるかもしれません。でも、それがあなたの人生ですから、そのモノと接していたときから少し時間も経っているがゆえに自分なりに上手に折り合いをつけられることの方が多いのではないでしょうか?
具体的な効能ということではありませんが、このような自分との対話を繰り返すことで、おのずと心がすっきりするということは確実にあると言えましょう。
ですから、片付けが終わるとたいていの方は、不思議とポジティブで前向きな気分を持たれます。たとえば学生時代にとったノートがでてきて、どうしても捨てられない。そのうちに、もう一度勉強したい気持ちが湧いてきて、大学院に入り直すことにしようか、それとも通信教育で自分のペースに合わせて勉強しようか、といった具合に。
老前整理で、生きるエネルギーが湧いてくるといったら大げさでしょうか。
ある新聞記者さんが、講座を受けた方を取材されたときには、こんなエピソードがありました。
ご夫婦で会社経営をされている五〇代後半のCさんです。彼女は、講座を受けて、一日一五分と決めて引き出しをひとつずつ整理し始めました。最終的な目標は、「来客が多いので、いつ、どの部屋をお客様に見られてもいい状態を保つ」ということに設定して、日々片付けをされました。
シミがついたので部屋着にと残しておいてまったく着なかった衣類、本、ビデオテープ、CD,一度捨てようとして夫に「まだ使える」と止められた靴の乾燥機などを捨てたそうです。片付けの過程でいろんなものを発見したのですが、その中に二四年前の家族の会話を録音したカセットテープがありました。
子どもさんが「ただいま~、お腹すいた~」といって帰ってきてから、家族で夕食をとっている状態を、ただテープレコーダーを回しただけのもの。モノの山に埋もれて、その存在すら忘れられていた四半世紀前のある日の何時間かの記録です。
テープを聞き返してみると、当時のいろいろな苦しかったことや楽しかったこと、子どもに期待する気持ち、忙しい中で子どもの思いに十分対応してあげられなかった後悔の念などが、一気によみがえり、しばらくこみ上げるものがあったとか。
思い切って片付けることで過去の自分と一瞬、向き合うことができたCさん。年月を経てよみがえったそのテープは、Cさんにとって「いまでは大切な宝物」となっているそうです。
こうした予期せぬ再会もまた老前整理の大きな効果の一つかもしれません。
そう思うとちょっと楽しみになって来ませんか?