小田桐早苗先生 コラム連載 第3回

兄弟姉妹について考える③

川崎医療福祉大学
小田桐 早苗


 皆様、こんにちは。第3回目になります。ライフステージに沿って、兄弟姉妹の気持ちについて考えるコラムです。私が担当させていただくのは、4回になりますので、折り返しですね。今回は、学齢期について、書いてみたいと思います。是非、一緒に兄弟姉妹の気持ちに思いを馳せてみましょう。

■学齢期の兄弟姉妹の気持ち
 学齢期の兄弟姉妹の生活の中心は家庭と学校になります。少しずつ兄弟姉妹自身も、社会について学び始めている時期です。保護者の方々から、兄弟姉妹のことでこのような相談をいただくことがあります。
「お父さんやお母さんにかまってほしいな、僕や私のことをもっと見てほしいと思っているのではないか。さみしい思いをさせてしまっていないだろうか。」というものです。
大人になった兄弟姉妹たちと話していて、「寂しかった…」と思いを話してくれる人もいます。いつもお父さんやお母さんの話題は、障がいのある子どもが中心に感じていたり、周囲の大人から、「将来は、あなたが障がいのある子を支えるんだよ」なんて言われていたりすると、「私は、お父さんやお母さんにとって必要なの?」と感じてしまうことがあるのです。親にとっても、大きく揺れながら、障がいのあるわが子への将来を思いながら、現在に戸惑いながら必死の時でもあります。兄弟姉妹が、そんなに気にしているなんて気が付かないかもしれませんし、兄弟姉妹にそんな気持ちをさせようなんて思ってもいないことだろうと思います。また、兄弟姉妹自身もそんなことを言葉にして保護者の方に伝えてくることも少なかったりするわけです。
一方で、「寂しいと感じなかった」という人もいます。もちろん個人差もありますし、置かれた環境によっても違いがあるのですが、兄弟姉妹との座談会をしたときに保護者の方の兄弟姉妹への関わりに共通点を感じたことがあります。それは、兄弟姉妹と保護者の方の時間の持ち方でした。ある兄弟姉妹が話してくれたエピソードでは、障がいのある子の療育の送迎に付き合ったり、病院へ付き添って待ったりした場合に、日常のどこかで「兄弟姉妹のスペシャル時間」を用意してくれたと話していました。塾の送り迎えは私とお母さんだけの時間や、お風呂は僕とお父さんだけの時間といったように、ちょっとした独り占め時間が
保護者の人が自分のことを気にかけていると実感につながっているような気がしました。
次の話題ですが、「友人関係について、障がいのある子のことを恥ずかしいと思ったことがあるか」というテーマについてです。兄弟姉妹達は、障害のある子がいるという事実に対する周囲の反応ついて考えています。周囲の友達も悪気はないかもしれませんが、友達の反応を受けて兄弟姉妹達が困惑してしまうということがあります。実は、兄弟姉妹達は、よく感じていることかもしれません。例えば、同じ学校に通っていて、少し突飛な行動を障がいのある子がしてしまったときに、周囲がどんな反応をしているかをその場で見て感じています。大切な家族と大切な友達との間で、いたたまれない気持ちになっていることもあります。しかし、兄弟姉妹達の多くは、友人関係のことを、保護者の方に伝えていません。兄弟姉妹達は、それぞれの世界の中で、折り合いをつけながら様々なことを考えています。
保護者の方が、折に触れて学校のことや友達のことを聞くのも良いと思います。でも、兄弟姉妹自身の意志で保護者の方に言わないこともあるかもしれません。そんな時は、“あなたのことを大切に思い、気にかけている”ことを伝えるので十分かもしれません。
兄弟姉妹達が感じる経験を保護者が全てカバーすることはできません。でも、同じような気持ち、同じような経験をしている人がいること、そしてどんな風に行動しているかを知ることは、兄弟姉妹が自分の中で考えていく上で役立つのではないかと思います。その一つとして、きょうだい会があります。兄弟姉妹にとって、障害のある子のことを気兼ねなく話せる場の一つになりえます。親の会があるように、きょうだいの会があり、そこで自分の経験を話したり、他の人の話を聞いたりすることで、ちょっと気持ちが軽くなる経験ができるのかもしれません。きょうだいの会に入らなければならないということはないと思いますが、そのような場があるという情報はお伝えしても良いかもしれないですね。
 
 さて、次回が最終回ですね。第4回は青年期・成人期の話題について取り上げてみます。また次回もよろしくお願いします。