『鹿肉食のすすめ 日本人は鹿肉で救われる』
C・Wニコル著
ハンターの朝は早い。
今朝も5時台に携帯が鳴っていた。
彼が鹿肉業に携わっており、わたしも少しばかり手伝うようになった。
鹿肉に関する書籍は多くない。
図書館で調べたらあったので読んでみた。
シカと人間・日本人との暮らしの歴史や、シカが増えた背景がわかりやすく書かれている。
カナダやアメリカのようにオオカミ、クーガーといったシカの天敵がいまだかなりの数、生息している国々ではシカの個体数がほどよいバランスを保っている。しかし天敵が大幅に減っている、もしくは英国や日本のごとく絶滅している国ではシカの数は増え放題となる。
日本各地の縄文時代およびそれ以前の貝塚からは、シカなどの動物の骨が出土している。アイヌ民族はシカを伝統的な食材と考えている。
19世紀後半になるとエゾシカは大量に殺されて輸出用の缶詰食品になった。明治時代の北海道ではエゾシカの缶詰がミズナラなどの硬材と並んで主要輸出品であった。日露戦争で戦う兵士たちの糧食としてもクジラの缶詰とエゾシカの缶詰が使用された。
こうしてさかんにエゾシカを活用したことや明治初期の大雪などで、個体数は激減した。
1950年代に狩猟法により猟が規制されると、エゾシカの個体数は激増した。シカは繁殖力が強く個体数は1年に15~20パーセント増加する。天敵や狩猟によって数が抑制されなければ、状況によっては3~4年で倍増しそうな地域さえある。
シカの解体方法も、文章とイラストで書かれているのでわかりやすい。調理法も豊富に乗っている。
ニコル氏の幼少期の教育の様子も見られて面白い。
昔、祖母がこんなことを言っていた。野生の動物や鳥を料理するときは、それらが生きているとき好きだった物を思い浮かべ、そのうちの少なくとも1つを料理の中に使うと良いと。たとえばクマの肉に蜂蜜かベリーを加えるという具合だ。鹿肉にはニンジン、ハーブ、豆類などが良い。
魚でも肉でも食べて支障がないかどうか、臭いで嗅ぎ分けられるようになれと私は幼い頃から教えられてきた。