読書感想文 | 倉山塾東北支部ブログ

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もう、十年以上前に読んだ本です。



しかし今も鮮明に記憶に残っています。



最近、歴史を勉強しなおして、この方。

鈴木貫太郎が、どんなに凄い人なのか、よくわかりました。

立石 優  「鈴木貫太郎」  PHP文書



本書の冒頭から、鈴木の、



「俺は運のいい男だ」そう言い切れる者は、世の中に決して多くは無い。



から、はじまります。


明治時代の日清・日露戦争で、水雷艇長として武勇伝をたくさん持つ英雄。鈴木貫太郎。

そんな貫太郎は、実は幼少の頃、「泣き貫」 とあだ名が付くほどの泣き虫だったそうです。



その後、昭和天皇の侍従長として、二次大戦まで表に出る事はありませんでした。



しかし、昭和二十年、二次大戦末期。

日本は敗戦の危機を迎えます。

国内は、徹底抗戦派が台頭し、内閣にもそれが及びます。



昭和二十年、四月四日、小磯内閣が敗色濃厚の責任をとり、倒れました。

重臣会議が開かれます。




・・・一体誰が敗戦の責任をとれる総理大臣になれるのか。

誰にもわかりません。



そこで、昭和天皇が白羽の矢を立てたのが、明治の英雄、鈴木貫太郎でした。




昭和天皇は鈴木貫太郎を呼び、

「鈴木ならよかろう」

「鈴木、達者か」

と、お声をかけます。


すると、次にひときわ声を高めて、「いくつになる!」


とお聞きになりました。

鈴木は、「数えで七十九でございます」


と、答えます。


昭和天皇陛下は、

「高齢のところ、ご苦労だが、もう一働きしてくれぬか」

「・・・・・」


鈴木はここで、一度断ります。


すると、昭和天皇は、懇々と諭すように、かつもう一段、声を高めて、


「たのむから、どうか、まげて承知してもらいたい」



陛下にここまで信頼され、頼まれたならば、断る事はできません。

鈴木は、

「不肖鈴木貫太郎、身命を賭して、ご奉公申し上げます」



・・・その後、

昭和天皇はご聖断を下され、終戦になった事は皆さんご存じでしょう。




その時、鈴木貫太郎は?



八月十五日、四時近く、鈴木は参内しています。

少し窮屈なコートを着て、天皇のご前に進みます。


すると、昭和天皇は、

「鈴木、よくやってくれたね」

声を高めて、もう一度。

「本当によくやってくれた」

鈴木をねぎらいます。



すると、鈴木貫太郎の肩が振るえ、大粒の涙が頬を伝って、

床にぽたぽたと落ちたそうです。



・・・・この瞬間、水雷の鬼の「鬼貫」は幼い頃の「泣き貫」にもどっていたのです。




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