やってしまった・・・・。

さすがに、あれはひどいと自分でも思う。

クララの前に雇っていた大学生に怒鳴ったときは、まずいとは思ったけど、こんな罪悪感はなかった。

クララはたしかにドジだが、仕事は見ていて笑えるくらい一生懸命だった。

かわいらしさと、ほんわかした笑顔で、客の受けもよかった。

やめさせる理由なんてなかったのに、なんであんなこと言ってしまったんだろう。

「はあ・・・」

「どうした瑛?」

「ああ、なんでもない、じいちゃん」

「そうだ、クララさんだが・・・」

「ああ、うん、わかってる!」

 不意に子供の泣き声がフロアに響いた。

 どうやらジュースをこぼしたらしい。

 うは・・・苦手な場面。

 居ないと、分かっていてもついクララの姿を目で探してしまう自分が情けない。

 あいつなら、こういうの得意そうなのに・・・・。

 しぶしぶ取り上げたタオルが、横から奪われた。

 

「大丈夫? うん、泣かなくていいよ。ほらキレイ、キレイ」

「まあどうもすみません」

 クララだった。

 子供を上手くあやしながら、子供の服と、テーブルを綺麗に拭いている。

「ほら、もうキレイだよ? ね、男の子だからもう泣かないよね?」

 子供は、まだ泣いた後の余韻で震えながらも、「ありがとう、おねえちゃん」と舌ったらずな声で言った。

「うん」

子供の頭をなでるクララ。

・・・・・さすがだ。

 

「マスター、遅刻申し訳ありませんでした」

「委員会だったね、ちゃんと連絡してくれたからかまわないよ」

「はい、今から入ります。今日もがんばります!」

 じいちゃんとにこにこ話すクララの笑顔が怖い。

 来てくれたのは正直嬉しいが、これからどうしよう。

 さすがに、黙っているのはまずいと思い、お皿を洗うクララの背中に、意を決して声をかけた。

「ええと、あのさ、綾瀬さん?」

 くるり、と振り向いたクララは。

 俺に向かって、大きく「アッカンベー」をした。

 うは、むかつく!!

「ブレンド3つあがったぞ」

「ああ、はい、今行く」

 ああもうむかつく。

 むかつくけど・・・・でも、悪い気分ではなかった。

  

「ちょっとワシは、出かけてくるでの」

「え?でかけるの!?」

「あとは片付けと戸締りを頼む。どうかしたか?」

「いや・・・・なんでも」

 二人きりにしないでくれよ。

 はあ・・・。

 やっぱちゃんと謝らないとまずいよな。

 無言でテーブルを拭いているクララに向き直る。

「あ、あのさ、その・・・・」

「・・・・」

「昼間は、悪かった。あれはその、言葉のあやというか、その・・・」

 突然、クララの肩が震えだす。

 次ぎの瞬間、クララははじけるように笑い転げ始めた。

「くくく・・・・・」

「なにがおかしいんだよ!」

「だ、だって・・・・」

「ああもう、前言撤回! やっぱお前みたいな変なやつ知るか!」

「ご、ごめん、違うの。嬉しくて」

「はあ?」

 クララはようやく笑いを納めると、にじんだ涙を指でぬぐった。

「私、友達と喧嘩したの初めてだったから。怖かったけど、なんかいいね、こういうの」

「はあ?」

 何を言っているんだこいつは。

 喧嘩が楽しい?

 俺は小さい頃ガキ大将なんかと喧嘩して、それで友達もいなかったけど。

 それで、楽しいなんて思ったことはない。

 まあ、たしかにこんなボケたやつじゃ喧嘩にもならないだろうから、もの珍しいのだろう、多分。

「あ、でも、「来るな」なんて、わたし何かしたのかな?」

「いや・・・その、なんつーか勘違い?」

「んじゃ、わたしここに居ていい、かな?」

「べつに・・・どっちでも。っていうか・・・居て、いい。子供の相手とか俺苦手だし」

「よかった」

 にっこりとクララが笑う。

 ・・・・・よかった。

 素直にホッとした。

「あ、そだ」

 俺はポケットからチケットを2枚取り出した。

「これやるよ」

「なに? あ、遊園地のチケットだ。今週の日曜日までだね」

「客にもらった。行ってこい、お前好きだろこういうの」

「うん、じゃあ、バス停に10時に待ち合わせでいい?」

「そうそう、バス亭に10時・・・って、おい!俺が行くなんて言ってないだろ!」

「え?違うの?」

「違う! 誰か他のやつと言って来い。そう、他の・・・」

 そのとき、なぜか色黒で長身の男とクララが遊園地に行く画像が思い浮かんで、なぜか俺はあせった。

 なんでだ。別に、クララが誰と行こうと関係ないはずなのに。

 志波に、遊園地はあまりにも不似合いだからだ、そうに違いない。

 しかし、そんな俺にクララはキッパリと言い切った。

「佐伯君と行きたいな」

「行かない!興味ない」

「ないの?」

「ない」

「全然?」

「全然」

「ジェットコースターとか嫌い?」

「ジェット・・・嫌いだ」

「最近ゴーカートができたらしいよ?結構本格的だって、密ちゃんが言ってた」

「なに!? ・・・・いや、興味ない。うん、まったくない。・・・だいだい、学校の奴に見られでもしたら、どうするんだ!うるさいんだぞ、女どもは!」

「佐伯君が迷子になってたところを偶然見つけて、道案内するところ、とか言えば・・・」

「な、なんだ、その言い訳は! せめて逆だろ! 珊瑚礁の中で迷子になれる、天才的方向音痴のお前がそんなこと言っても説得力皆無だからな!」

「あ、あれは・・・ま、迷子になったんじゃないもん、部屋を間違えただけで・・・」

「だああもう! とにかく行かない! 行かないったら行かない!」

「そっか・・・」

 クララは残念そうに、手の中のチケットに視線を落とした。

 ああもう、そういう顔は反則だ!

「・・・・・」

「・・・・・」

「行こ?」

「・・・・バス停に10時な、遅れるなよ」

「やった!」

 ぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶクララ。

 なんかすっかりこいつのペースに巻き込まれているような、ものすごく恐ろしい予感がして、あわててかき消した。

「お、いい眺め」

図書館で本を読んでいたら、隣の席の男子たちが騒ぎ始めた。

「やっぱ、綺麗だなあ、水島さん」

視線の先には、勉強している水島密。

色白で黒髪、清楚な雰囲気に憧れている男子は多いようだが、俺の好みではないのでどうでもいい。

「あれ?隣の子も結構かわいくない? なんか不思議な感じ子だな」

「馬鹿、お前しらないのか!?」

 隣の子・・・・げ、やっぱり。

 水島密と一緒に勉強しているのは、クララ。

「3組の綾瀬クララだろ、俺も目つけてた、可愛いよな!」

「俺なんて、ちょっとしゃべったことある!」

「なに! 今度俺も話しかけて見ようかな」

ああもう、うるさい!

俺は読んでいた本を閉じて、立ち上がった。

あほかお前らは、クララごときでなんで騒ぐ必要がある。

 

俺は最初、クララは俺に気があるのかと思っていた。

しかし、そうでもなさそうだということが、やがてわかってきた。

クララは俺に限らず、誰とでも仲良くなるからだ。

女子の友達も多いが、ナンパな外国人に、やかましいバンドマン、お堅い風紀委員長にいたるまで、普通の女子なら「話してみたいけど怖そう」と思うような男とでも平気で楽しそうに話している。この間は、化学教師の若王子と下校しているのを見かけた。

どうも、人見知りする、とか物怖じする、ということを知らないようだった。

なんとなく腹が立った。

「ごめんね、今日は家の用事があって・・・」

「え~佐伯君この前もそう言ってたじゃない」

「そうだよ!今日こそは付き合ってよ!」

「あ、そうだ、今日は予備校だったんだ」

「だめー!みえみえ!」

ふう、参った。

校門のところでうっかり捕まってしまった。

このままじゃ、開店時間に間に合わないかもしれない。

やばい・・・・。

そのとき、てくてく歩いてくるのんきな姿が目に入った。

クララだ。

よし、あいつをダシに使おう。

「やあ・・・・」

やあ、君も今帰り?と言おうとした俺にまったく気がつかないまま、クララは小走りに通り過ぎた。

駆け寄った先は、長身の男。

そのまま、二人は連れ立って校門をくぐっていった。

あいつは、たしか、志波勝巳。

男っぽい外見とワイルドな雰囲気であこがれている女子は多くても、無口で怖そうな雰囲気から実際に話しかける女子はほとんどいない。

クララのやつ・・・・・。

「ねえねえ、行こうよ佐伯君」

「うるさい!」

気がつけば、俺は目の前の女たちに怒鳴りつけていた。

 

はあ。

なにやってんだろ、俺。

昨日つい怒鳴りつけてしまった女子たちは、散々なだめた挙句、お昼ご飯2回の約束でなんとか納得させた。

はあ・・・。

気分転換に、外に出たのだが・・・・野球部のグラウンドの傍にいるのは、クララとそして志波だ。

なにやら真剣に話し込んでいる。

俺が見たことがないくらい、真剣な顔のクララ。

やがて、志波はフェンスを掴んでいた手を放し、去っていく、それを追いかけるクララ。

 

・・・・なんだよ。

 

お前はそういう奴かよ。

「あ、佐伯くん」

またつかまってはたまらないと、足早に校門を出ようとしたところで、待っていたと思われるクララに呼び止められた。

「・・・・」

「あ、ねえ、待ってってば。あのね、今日のアルバイトなんだけど・・・」

「いいよ」

「え?」

「来なくていいって言ってるんだよ! お前なんか、どうせ役に立たないし。本気で雇うわけないだろ、そんなことも分からないのか?」

「え・・・・ちょっと、ねえ佐伯君!」

後ろで呼び止めるクララの声に、俺は振り向こうとはしなかった。

わたしは、ヒロインの設定をついつい細かく決めてしまう癖があります。
本名プレイで「私に向かって、愛を囁いてる」なんてマジありえないです!
素敵な王子さまたちに愛されるヒロインはもちろん、わたしではなく王子さまにふさわしい女の子であってほしいわけです、わたしとしては!
性格で、こういう容姿で、と細かく決まってヒロイン像が確立したとき・・・怒涛のようにストーリーが沸いてきて、気がつくと小説にしてしまっています、恐るべしGS!

 
GSのヒロイン
「桜沢 まりえ」(おうさわ まりえ)
ネガティブなお姫さま
好きな男の子 葉月 圭

中学時代のある経験のせいで、すっかり自信をなくしてしまった女の子。
最初はクラスメートと会話もままならないくらい内気。「どうせ私なんか・・・・」が口癖。
はばたき学園入学をきっかけに、好きな人(葉月)に近づくために必死な努力を始める。素直でひたむきな少女。
外見は、色白で、長い黒髪。清楚な感じ。

  
  
GS2のヒロイン
「綾瀬 クララ」(あやせ くらら)
(思いつかなかったので、自分のハンドルネームに適当な苗字をつけたら定着してしまいました。ブログ作者とは無関係と考えてください)
人魚のように神秘的な少女
好きな男の子 佐伯 瑛

口数は少なくが、いつも穏やかに笑っているイメージ。興味を持った人にはすぐ話しかけて仲良くなる。
物怖じするとか、人見知り、という単語を知らない少女。
天然で、あまり怒ったり、感情を激することがない。
ちょっと浅黒い肌に、茶色がかったウエーブの髪(くせっ毛)健康的な感じ。高校生のわりにスタイルがいい。
ときどき海を見て寂しそうな顔をしていることがある。



エリさま よりバトンいただいちゃいました!

 

お答えしたいと思います。

  

●もし道端に宇宙人が倒れていたら?
多分・・・宇宙人だと言うことに気がつかずに通り過ぎると思います。
私、しょっちゅう「昨日すれ違ったのに気がついてもらえなかった」と言われるので。
どんだけぼんやりしてるんだろう。

 

●彼の浮気現場に遭遇したら?
あ、そう、お姉さんなんだ。あれ?一人っ子じゃ??

 

●もし今突然『オレオレ詐欺(振り込め詐欺)』の電話が来たら?
すみません、難しいことよくわからないんで・・・

 

●大好きな芸能人が目の前にいたら?
夢よね、と思って立ち去る。

 

●変なおじさんの格好をした変なおじさんに声をかけられたら?
気がつかなかったフリをして、逃げます。

 

●猪が猛スピードで自分に突っ込んできたら?
これ食べれるのかな・・・・とか考えてみます。

 

●朝目覚めて背中に翼が生えていたら?
悩みます。多分泣きます。

 

●コンビニでバイト中に包丁を持った強盗に『金を出せ!』と脅されたら?
お前こそ金を出せ!と脅し返す・・・のは無理なので、「店長~!」と叫ぶと思います。

 

●リアクションおもしろそうな5人にバトンタッチ!
すみません、あんまり友達いないので
ここ置いておきます。

「はあ・・・・」

最後の客が帰って、珊瑚礁のカギを閉めた。

まったく、今日はさんざんだった。

「おつかれさま、佐伯君」

「いいから、座れそこに」

「はい」

「ちょっと待ってろ」

 クララは素直にカウンターに座った。

 しかたないので、コーヒーを一つ出してやる。

「いいの?」

「余りだどうせ」

「ありがとう。あ、おいしい」

「そうか?」

「うん、香りがすごくいい」

 クララは本当においしそうにコーヒーを飲んだ。

 見ているこっちまで、つい気持ちがなごむほどに。

「・・・・俺がブレンドしたんだ」

「すごい! 佐伯君が作ったとは思えないくらい、さわやかな味だよ!」

「一言多いんだよ。・・・いや、そうじゃなくて、なんでお前がここにいるんだ!っていう話だろうが」

「あ、そか。佐伯君と話をしたくて」

「・・・・まさか、例の件か?」

「うん、なんかそれで気まずくなるのは、嫌だと思って」

「あ、そ」

 なんか、気が抜ける。

「別に気にするほどのことでもないだろ、事故だ事故」

「まあ、そうなんだけど。なんか避けられてるみたいだったから」

「それは、いつもだろ」

「う・・・」

 悲しげにうつむいたクララの様子に、不覚にもちょっと焦った。

「あの、さ、ひとつ、聞いていいか?」

「なに?」

「お前、最近この町に引っ越してきたって言ってたよな?」

「うん、小さいときに住んでたんだけどね。あんまり覚えてないけど」

「マジか・・・」

「それがどうしたの?」

「まさか、お前・・」

カラン・・・・。

「おや、楽しそうだね。お邪魔したかな。」

 余計な一言と共に、じいちゃんが入ってきた。

「瑛にも友達がいるようで、安心したよ」

「そんなんじゃねーよ。だれがこんなやつ」

「ひどい・・・」

「ほほほ、仲がよいの。・・・・じゃあクララさん。これ、確認していただけますかな?」

「はい」

 じいちゃんがカウンターのテーブルの上に広げたのは・・・・・雇用契約書。

「おい?」

「ここと、ここに記入を。あ、君は未成年だからご両親の同意書ももらってきてくれるかな?」

「はい」

「もしもし?」

「履歴書も今度でいいから」

「はい」

「だから、ちょっと待てって!!」

 ドン!と俺はテーブルを叩いた。

 二人は初めて俺に気がついたかのように、きょとんとした目を向けた。

「じいちゃん、まさか、これを雇うつもりか!?」

「これ、ってひどい・・・」

「ああ、さっきスカウトしたら、ぜひに、と言ってくれての」

「正気か!なんでこんな女を」

「男の方が使えると、男性を雇ったのはたしかお前だったな?」

「う・・・・そうだけど! なにもこいつでなくてもいいだろう!こいつボンヤリだし、ぜったい学校にしゃべっちゃうよ!」

「しゃべらないもん!」

「大体、こいつの仕事みただろ、今日だけで何枚皿割ったか!」

「う・・・それは、ごめんなさい、けど」

 ガタ、とクララは立ち上がった。

「がんばるから。ぜったい役に立てるようにがんばるから! だからお願い佐伯君。わたし、ここで働いてみたい・・・・」

 クララは、大きな目を大きく見開いて、まっすぐに俺を見据えた。

 真剣な目だった。

「はあ・・・・」

 頭痛がして、おもわず額を指で押さえた。

 なんでこんなにまっすぐなんだ。こんなやつ野放しにしといたら、そのうち誰かにだまされて、ピーピー泣くぞ絶対。

「わかったよ、好きにしろよ」

「あ、ありがとう!」

「そのかわり、容赦しないからな。ボケッとしてたら・・・わかってるな?」

「うん、がんばる!」

 クララの満面の微笑み。

 キラキラと星が飛んでないのが不思議なくらいの喜びようだった。

 ああもう、変な奴。

「それで人魚と若者は帰ってきたの?」

「それは、わからないんだ」

「どうして?」

「そういう物語なんだ」

「そんなの悲しい」

「でも、ボクならきっと見つけ出す」

「え?」

「だから、ほら顔をあげて」

「誓いの口付けだよ、この海でまた、出会えるように・・・・」

まさか・・・・

「おい、瑛!」

は、と我に返ると、目の前で洗いかけの食器が水に浮いていた。

やばい、あわてて蛇口をひねって水を止める。

「なにをやっとる! 客を待たせすぎだ」

「悪い、今行く」

 なにを考えているんだ俺は。

うわの空になっている場合ではない。

なにしろ、今日は予定が狂った。先週から雇ったバイトが来ないのだから。

大学生の男だったが、指示しないと動かない上に、仕事がきついとぶつぶつ文句言う態度がむかついて、「やめちまえ!」と怒鳴ってしまった俺のせいだろうとは思う。

おかげで、接客とコーヒー淹れるだけでも精一杯なのに、皿洗いなどの雑用も俺がやらないといけない。

そういう日に限って客の入りが良いのは、なぜなんだ。

しかし、そんなことよりも、俺をいらだたせている原因は・・・・・

「あの・・・」

 そう、おまえだおまえ!

 って、ん?

「佐伯君?」

「いらっしゃいませ、ようこそ珊瑚礁へ、一名様ですか?」

 なんで、お前がここにいるんだよ、綾瀬クララ!!

「佐伯君だよね?」

「ちょっとツラ貸し・・・よろしいでしょうか?」

 とりあえず、クララを店の奥へと引っ張っていった。

「なんで店に来た」

「佐伯君にお話があって、ここに来れば会えるかなと思って」

「いるにはいるが、俺は忙しいの! お前と遊んでる暇なんてないの!帰れ!」

「でも・・・」

 そのとき手を拭きながら、じいさんが割り込んできた。

「瑛、お友達かい?」

「じいさん」

「あ、こんにちは」

「どうも、こんにちは、おお、可愛らしいお嬢さんじゃないか」

「なごんでんじゃね~よ! いいの、こいつはもう帰るから!」

「瑛!女の子にそんな言い方をするもんじゃない! 用事があるならちょっと待っていてもらいなさい。すまないね、お嬢さん今ちょっと忙しくてね」

「いえ、お構いなく」

「お構いなく、じゃねええだろ! だあ! もういい、勝手にしろ!」

 まったく、なんてむかつく女だ!

「この店のオススメってなんですか?」

「珊瑚礁ブレンドになります。コロンビアベースで香りが高く、やや酸味があります。この店のマスター自慢のブレンドです」

「じゃあそれください」

「かしこまりました」

次々にオーダーをさばいていく佐伯君に、つい見とれてしまった。

本当に同じ年とは思えないくらい大人っぽい。

「あのー?」

「あ、お待たせしました、5名様ですね?お席にご案内します」

「すみません~注文いいですか?」

「はい、少々お待ちください」

けど、忙しそうだ。

見ると流し台にどんどん食器が溜まって行ってる。

あ、お客さん、座りたいけど前の人の食器がまだ残ってるから座れないでいる・・・。

 

よおし!

 

「すみません、これ貸してください」

店の椅子にかけてあったエプロンを取ると、自分の体に巻いた。

よし、これでなんとか。

「お嬢ちゃんなにをする気だね?」

「トレイ、貸してください」

 

「お待たせしました、どうぞ」

「あら、どうもありがとう」

 テーブルの上を片付けること、それとお皿洗い。

 私にできることは、それくらいだ。

 早速、顔色を変えた佐伯君が声を潜めて怒鳴ってきた。

「お前、なにやってんだ!」

「まあまあ・・・・」

「勝手なことするな!」

「あ、ほら、紅茶とレアチーズあがったよ?」

「おっと、っていいからやめろ!」

 わたしは腕を捲り上げると、お皿を洗い始めた。

 あんまりやったことないけど、結構楽しいかも。

「お嬢さんすまないね、まだ食器洗い機がないので、手作業なんですよ。洗いあがったものは乾燥機に入れておいてくれればいいから。これもいいかい?」

「はい!」

 

1週間くらい後、またお昼休みに佐伯くんを見かけた。

わたしは、ついつい悪戯心を起こしてしまった。

それがどんなことになるかも知らずに。

よ~し。

「ひどーい、佐伯君、今日は私とご飯たべる約束だよ?」

「あ、ごめん、今、行・・・」

 すごい簡単に引っかかった。

 私を振り返るなり、佐伯君は、いつもの「ものすごく嫌そうな顔」をした。これもまた予想どおりでなんかおかしい。

 くすくす笑ってる私に、佐伯君の報復が降りかかった。

「弁解だけは聞いてやろうか?」

「・・・ほんの冗談です」

「購買で、超熟カレーパンと牛乳、買ってきて」

「はい?」

「お昼食べる順番なんだろ?」

「もしかして、お代は?」

「・・・・なんか言った?」

「買ってきます」

「裏庭まで出前すること。先行ってるから」

 

「佐伯君、パン・・・って、ええ?」

 パンを買ってきたけれど、佐伯君は・・・・寝ていた。

 芝生の上で、ほぼ大の字に。

 ぷ。

「佐伯君、佐伯君ってば」

「ん・・・」

 ちょっと揺すってみると、起きた。

 といっても目が完全には開いてない。

 支えてないとまた寝そうな雰囲気だ。

「はい、パン。食べないと、午後からもたないよ?」

「ああ、うん、サンキュウ」

「こらこら、袋は取りなさい」

「ああ・・・」

「牛乳も飲んで」

「ああ・・・」

 だめだ、完全に寝ぼけてる。

 喉に詰まらせないかひやひやしたけど、3口ほどでカレーパンを食べ切り、牛乳も飲んでくれた。

 よく噛みなさいといいたかったけど、どうせ聞こえてないからやめた。

 そして、ぽりぽりと頭を掻くと、

「寝る」

一言そういうなり、再び芝生に横になってしまった。

規則正しい、寝息が聞こえてくる。

・・・食べてすぐ寝るとブタになるよ?

でも、なんか、おかしい。

 せっかくなので、パンのお代代わりに寝顔を観察させてもらうことにした。

 よく寝てる。子供みたいな顔して。

「ん・・・・ウエハース・・・・3ダース。小麦粉・・・・キロ。来週のシフトは・・・・」

 寝言。お店の夢でも見てるんだろう。

 形のいい眉の間に、深いしわ寄ってる。寝てるときぐらい、休めばいいのに。

 そのしわを消すように、そっと佐伯君の額に手を当ててみた。

 ぬくもりに安心したのか、寝顔は穏やかになっていった。

 よかった。

 佐伯君があそこまでモテる理由が、なんとなくわかる気がする。

 単に外見がかっこいいだけなら、お昼を食べる順番が3ヶ月先まで埋まったりしない。

 言うと怒るだろうけど、佐伯君はかわいいのだ。

 それに本当はとっても頑張りやさんだ。

 でも、そうやってモテることが佐伯君を疲弊させているのも間違いない。

 お店と勉強と、それだけでも大変なはずなのに。

 だいたい、今日は珍しくお昼の予約が入ってなかったなら、一人で休んでいればいいのに、なんで私の冗談を本当にしちゃったりしたんだろう。

 ・・・・パン買いに行かせたかったから、だよね、うん。

 

 私の手に半分隠れている顔を見つめてみる。

 やっぱり綺麗だ。

 芝生に投げ出された体は、大きくてたくましい。

 かっこよくて、勉強もできて、普通の高校生が欲しがるものは、全部手に入れているように見える佐伯君。

 いくらでも楽な生き方ができると思うのに。

 そんなことを考えていたら、自分の中に、いままでなかった気持ちが芽生えてきた。

佐伯君のことが知りたい、と。 

 って、これじゃ佐伯君を取り巻いてる女の子たちと一緒だ。

 恥ずかしくなって手をどけようとしたそのとき。

「・・・ん?」

 2、3回瞬きして、佐伯君が目を覚ました。

「今、何時?」

「え。ええと、その6時?」

「げ、店をあける時間・・・」

 わわ、ちょっと・・・。

 

チュ。

・・・・・・・。

佐伯君が、あまりに勢いよく体を起こしたために、逃げそびれたわたしの唇に、佐伯君の・・・・。

!!!!!

口元を押さえて、お互いから目を離せないでいる、私と佐伯君の頭の上に、始業ベルが鳴り響いた。

昼休み、佐伯君を見かけた。

なんだかため息をついていた。

「佐伯君?」

「あ、ごめん、ほんと今行こうと・・・・」

 わけのわからないことを言って振り返った佐伯君は、私だとわかるなり、げんなりとした顔をした。

 なんというか、いっつもこんな顔されるので、段々慣れてきた気がする。

「なんだ、お前か」

 こういう言われ方も、はっきり言って慣れた。

 佐伯君は、自分のことを屈折してるって言ってたことがある。

 私はそうは思わないけど。

 むしろ、屈折してるのは、私のほうかもしれない。

「どうしたの?」

「どうしたも、こうしたも・・・」

そのとき、遠くから複数の女の子が佐伯君を呼んだ。

「佐伯君ー!」

「きょうはうちらとお昼食べる番だよー?」

「早く~! 屋上でまってるからー!」

 佐伯君は、恐るべき早業で真夏の太陽のようにさわやかな笑顔を貼り付けると、ごめんね、すぐ行くよ、と答えた。

お昼ご飯の予約が3ヶ月先まで一杯って噂、まんざら嘘でもなさそうだ。 

なんか大変そう。

「はあ・・・・」

 また、ため息をつく佐伯君。

 ちょっと顔色が悪かった。

「大丈夫、疲れてるみたいだけど」

「大丈夫じゃない。けどしかたないだろ」

「疲れてるなら断ればいいのに」

「バカ。一人断ったら、後が面倒だろうが。だれに冷たくしたとか、だれと付き合いはじめたとか」

「そうなんだ」

 そっか、女の子の集団心理って、怖いもんね。

 よくわかってるな、佐伯君は。

 かっこいい、ってのもけっこう楽じゃないんだね。

「つうわけで、行ってくる」

「うん」

「・・・・その」

「ん?」

「愚痴聞かせて悪かったな。ちょっとすっきりした」

 あ。

 ほら、やっぱり。

 佐伯君は、むしろあまりに純粋すぎて、そのままだと傷だらけになってしまうから、だから屈折したフリをしているんじゃないだろうか。

 なんとなく、そう思った。

男性キャラすべて一通りエンディングを向かえ、口直し的に隠れキャラに手を出すことにした。
攻略方法は、「とにかく外出しろ」
ということだけは知っている状態でスタート。

というわけで、開始。
デートしなくていんだから、楽勝よね!と思っていたけど、これが案外めんどくさい。
ところで、出かけるって、何回くらい出かければいいの?
出かけるだけでいいの?なんも買わなくても?
わからない事だらけなので、とりあえず買えるだけは買うことにしたら、ものすごいアクセサリーの山・・・・。

ほとんど、

 

 

買い物依存症の女子高生

 

 
その買い物依存症の女子高生を迎えに来たのは・・・・遊君。

わお、ちっぱい!!


初めて観たよ遊君エンド。
どうも、最後のイベントが発生してなかったようです。
買い物依存症になったあげく、惚れた男は他の女に取られ(たと思ってる)、お友達は隣の家のお子様・・・・いやだなあ、こんな高校生活。
 

 
というわけで、やり直し。
どうもお出かけの回数が足りなかったようなので、とにかく片っ端から出かけまくる。
どうも実際に買わなくてもいいようなので、ほとんど冷やかしにとどめる。

今度は、買い物依存症ではないが、徘徊癖のある高校生のようだ。

最初に失敗したときに、出かけることで、いろんな人のイベントが見れることを発見したので、なるべくたくさんキャラを登場させてのプレイ(後半爆弾付きまくりだったけど)

 
ハリーと志波君がなかよくしてたり、
天地君とはるひちゃんがケーキのことで口論してたり、
志波君は若王子先生を尊敬していることが判明したり、

 

申し訳ないけど、赤城君のイベントより面白かったかも!
ハリーって女だったら、竜子ねえさんよりよほど、志波とお似合いなんじゃないかと思うのわたしだけ?

 

しかし、一番よく出会ったのは、姫子さま。
なにしろ今回、誰とも仲良くしちゃいけないので、もちろんデートもしてないわけで、ついついうっかり、晴れ着とか、ドレスとかで外出しちゃって、
姫子さまに

 

「デイジーのバカ! なによその格好!(意訳)」

 

と怒られまくりでした。

そういえば今回、初めて経験しました。
「一人ぼっちの修学旅行」
失敗した赤城ルート一回目は、密ちゃんが一緒に回ってくれたのですが、
2回目は、みんなに冷たくしすぎたのか誰も誘ってくれず、一人ぼっち・・・。
さ、寂しすぎる。


ねえ、赤城君。
君の好きな女の子は、

徘徊癖があって、ドレスでショッピングモールを闊歩し、修学旅行に一緒にいてくれる友人の一人もいない女だって知ってます??
君、どうやらはばたき学園ではかなり人気ありそうだけど、本当にいいのか、こんな女で??

 

そして無事迎えた赤城君のエンディング

きゃあああ、あの教会よおおお!!!

ああ、もうここで葉月王子が出てきたら失神するかも!(おい) 

 

 

しまった、肝心の赤城君についての感想が皆無だわ。
やはり私プレイレビューは向いてないみたい。

「あ、佐伯くん!」

 や~な予感とともに振り返ると、クララのほんわかした笑顔があった。

 昨日の今日でこれかよ・・・・。

「・・・・なに?」

 おもいっきり嫌そうな顔をして答えてやったのに、小麦色の顔の笑みが揺らぐことはなかった。

「一緒に帰らない?」

「・・・・なんで」

 なぜそうなる。

 まったく意味がわからない。

「ん・・・なんでかな?」

「俺に聞くな!」

「だめ?」

「・・・いいけど」

 めんどくさくなって、俺は先に歩き出した。

 猫みたいな顔して犬かこいつは。

 なんか、調子狂う。

「ねえねえ」

 歩幅をあわせるのも忘れて、けっこう早足で歩いていたのに、綾瀬は平気な顔でついてきた。

「佐伯くんはどうして珊瑚礁で働いてるの? 学校に内緒にしてまで」

「なんでって・・・・まあ、プライド?」

「え?」

「あれはじいさんの店だからな」

「へえ、そうなんだ」

「じいさんがもう年だからって、両親は店を畳もうとしてたんだけど、俺が手伝うからって説得したんだ。店に近いはね学に入学するのも、相当反対されたし。学校で問題起こしたり、成績下がったりしたら・・・・」

「・・・・」

 綾瀬は大きな目を見開いて真剣に聞いている。

 やばい、なんでこんなことこいつに話さないといけないんだ。

「まあ、そういうわけだ、おしまい!」

「やめなくていいのに」

「うるさい」

「もっと聞きたかったな」

 バシ。

 俺のチョップが、綾瀬の額に命中した。

「痛い! もう、わかったってば」

 額にチョップを直撃された綾瀬は、ぷく、と頬を膨らませてそれ以上はなにも聞かなかった。

 

  

 

「密ちゃん、一緒に帰らない?」

「もちろん、一緒に帰りましょう?」

入学してすぐ親しくなった水島密ちゃんを誘って、下校した。

一人で下校するのは好きじゃない。海のそばを一人で歩くのは、まだ辛い。

「クララさん、部活はやらないの?」

「え? うん、どうしようかな?」

「クララさんなら、運動部でもやっていけそうなのに」

「そ、そんなことないよ、わたしって鈍くさいし」

「それはたしかにそうね。今日の体育のバスケットでも、相手のゴールにシュートしちゃってたし。敵にパスしちゃってたし。」

「密ちゃん・・・・そんなに、はっきり言わなくても」

「ふふふ、だったら吹奏楽はどう? 一緒にやらない?」

「そうだね、考えておこうかな。・・・・あ」

「どうしたの?」

「ううん、なんでもない」

 視線の先に、佐伯君がいた。

 女の子4人に引っ張られるように、喫茶店に入っていった。

 そっか、人気あるんだ。そうだよね、かっこいいし。

 でも、お店大丈夫なのかな?

「あら~佐伯君じゃない。ははーさては・・・・」

「え?」

「隠すことないじゃない! お姉さん応援しちゃう!」

「え? あの、密ちゃん??」

「あーでもお姉さんとしてはできれば別の人がいいなあ。佐伯君は、ちょっとねえ狙ってる子が多すぎるかな?だって3ヶ月先まで、お昼ご飯一緒に食べる予約が一杯なんだって聞いたわよ?」

「え?そんなに?」

「まあ、あれだけかっこよくて、誰にでも優しくて、礼儀正しいと、無理ないのかな?まあ、それでもがんばる、っていうなら・・・・」

「ちがうってば!」

「あら、そうなの?」

 誰にでも優しい優等生。

 みんなは、そういう風に思っているらしい。

 もしかして、乱暴でぞんざいな扱われ方をしてるのって、わたしだけ?

 まさかね、ね。

 それとも嫌われてる?