今年の九月に自転車を買った。まだ乗れるかどうかわからなかったけど。子どもの頃乗 ったことがあるのに、ルールに沿って乗ったことがない。なんとなく乗ってみて、できた。坂道から降りると、「仙台、大好きいぃぃ」と思いながら、風のように走る。坂道に 登ると「やだ、東京にも住む可能性があったよ」とブツブツ言いながら、亀のように自転 車を降りて歩く。 

 

ところで、自転車を買う前に、しばしばバスに乗って移動していた。最初緩行するバス があまり好きじゃなかったけど、少し慣れてきてバスの雰囲気を気に入り、思わずバスの物語を集めるようになった。 

 

暑い夏の日は、遅れているバスを待った時「ママも応援して」と近くに立っていた四歳ぐらいの女の子は声をかけた。え?誰をお応援するのか?と思って私は耳を澄ました。お母さんは「バスさん、がんばれ!早く来てね!」と遅刻しているバスを応援した。かわいいと思ったとたん、角から迷子のバスさんがお見えになった。 

 

雨が降りそうな春の日は、バスに乗って木町通の辺りを通った時に、おじいさんと一緒に歩道を歩いていた男の子はバスを見て止めてバスに手を振りきた。かわいいと思って振り 返しそうに手を上げようとしたけど、急に気を変えちゃった。あの男の子は手を振ってくれるのが私じゃなくて、バスだといきなりわかってきた。バスの中にいる私はバスの一部 として考えられるかな。と考えすぎちゃってバスの代理として手を振るチャンスを失いち ゃった。 

 

覚えていない暖かい季節の日は、バスのドアの近くに座っていた通学途中での私は時々ルームミラーに覗いてバス運転手の顔を見ていた。寿徳寺の辺で渋滞に巻き込まれて、バスが止まっていた時に、またルームミラーに覗いてみて、運転手さんのコワモテを見てた。え?何?誰を脅かしてみているのか。と思ってよく見てみたら、前に止まっている幼 稚園のバスに気付いた。運転手さんは怖い顔がして、子供たちを恐れるようにしていた。 かわいいと思った。運転手さんはまたマスクを着用して、バスを動かしてきた。 

 

もうバスにめったに乗らないけど、冬が来るのを待っている。雪が降ったら、耳を澄ま して、目を広く開いてまたバスに乗ることになるだろう。それまでに、毎日自転車に乗っ て、仙台に「好きだ」と言い続けている。