いつも食べ物は燃料に過ぎないと思っていた。好きな食べ物は何?と聞かれたら、常に迷う。特に好きな物はないと答える可能性が高い。ウクライナから日本に来てから、食べ物についての質問されることも多くなってきた。日本料理で一番好きなのは何?食べられない日本料理はある?特にないと私は言う。〇〇の店に行ったことがあるの?とっても美味しいから、行ってみてください。是非是非と私は答える。実際は行かないかもしれないけど。でも、いい仲間がいたら、一緒に行ってみるだろう。食べ物より店のインテリアとか一緒にいる人が大切だと思うからだ。個人的な考え方であり、食事が好きな人も理解できる。けど、コンビニで買ったお弁当と有名な店の一品と私にとって違いはない。ただ燃料だからね。

 

だけど、日本に住んでいる料理が好きなウクライナ人の知り合いの男性もいる。よく国の料理を作ったりするそうだから、私も彼の料理の実験の話を聞き、何かを作ってみたいと思ったのだ。有名なウクライナのボルシチを初めて作ったのは来日の後だ。日本であまり買えないビーツなどの材料を見つけることも挑戦になり、存在している数えきれないボルシチのレシピから一つのを選ぶこともチャレンジだった。でも結局なんとか出来たね。作ったのだ、生涯初めてのボルシチ。正直に言えば、あまり美味しくなかった。まずかったとも言える。けど、本当に懐かしいと思う食べ物の味が分かった。ボルシチの味ではなく、ボルシチによく加えるサワークリームの味だった。料理が苦手な私は買うのを忘れてしまったからだ。

 

情報を探すなら、「サワークリームとは、生クリームを乳酸菌で発酵させて作るクリーム状の乳製品のこと」という定義が出てくるだろう。私に聞くなら、子どもの頃の味とか、実家の味とか、ウクライナの味だと答えるに違いない。メインディッシュとして滅多に食べられないけど、ウクライナの料理や食生活の大事な一部だと言って間違いない。

 

伝統的なボルシチやヴァレニキ等がサワークリームをかけて食べられている。パンケーキにかけるものとしても使われることがある。母はサワークリームを砂糖とブレンダーにかけて家庭のパイのためにクリームを作ったこともある。サラダのドレッシングの代わりにも使ったのだ。長くて寒い冬の後で、初めての晩春のラディッシュ、長ネギ、キュウリを切り、サワークリームを入れたものだ。または、ゆで卵、長ネギとキュウリを削り、ドレッシングとしてはサワークリームだった。少女であった私にとってやはり春の実感をもたらした味になったね。

 

忙しい生活を送っている場合、お弁当または外食は一番だろう。急ぎながら速く走るためにも、よく働くためにもいいのではないか。やはり食べ物は燃料だからね。だが、昔の春に戻せる懐かしい燃料もあるだろう。