中国の炭鉱用電気機関車 | Kura-Kura Pagong

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"kura-kura"はインドネシア語で亀のことを言います。
"pagong"はタガログ語(フィルピンの公用語)で、やはり亀のことを言います。

 2017年5月、中国遼寧省の撫順市へ蒸気機関車の写真を撮りに行ったのだが、2回しか蒸機を撮る機会はなかった。その代わりにたくさん撮ったのが電気機関車の写真だ。

 

 

 撫順というと炭鉱を連想する方も多いだろう。この地には深さ最大280mの巨大な穴がある。これが撫順炭鉱の露天掘り現場である。ここで採れた石炭を利用して撫順では製鉄所も操業している。私の目当てだった蒸気機関車はそこで走っていたものだ。

 

 この炭鉱は近代になってロシア企業が開発ものが日露戦争後に日本企業のものとなり、現在は中国企業のものとなったものだ。

 長年操業してきたこの炭鉱も最近は採掘できる石炭がなくなってきているという。内陸部の安い資源におされていることもあって採掘量はだいぶ減っているそうだが、それでも貨車を前牽き後推しする電気機関車を数多く見ることができた。

 

 下の写真は巨大な穴の底の方から貨車を後押しする電気機関車である。機関車とは反対側には人の乗る車両が繋いであって、後押しするときはそこで機関車を運転するらしい。ワニの口のような長いながいボンネットをもつ機関車がそろりそろりと坂をのぼる。まさか近代史の本で見た風景をナマで見るとは思わなかった!

 

 

 炭鉱を撮影したあと、ガイドに車両基地へ案内してもらった。

 

 

 車両基地に停まっている機関車の銘板をみると、旧ソ連製であることを示すものもあれば中国製だと示すものもある。先ほど機関車の形状を「ワニの口のような…」と記したが、間近で見ると結構バリエーションがある。

 

 

 L字型の車体を背中合わせにして機関車全体で凸型にしたものがある。

 

 

 長いながいボンネットだと思ったものが実は機関車本体と連結器で繋がったブースターだったり。

幹線にはない急カーブ急勾配で力を出せるように、と設計したものがこういった機関車なのだ。

 

 

 これは現場の作業員に飲み水を届けるタンク車だろうか?

 

 

 これは先ほどの車両基地とは別地点、国鉄との接続駅で撮影したもの。炭鉱の通勤列車として用いられた車両だ。現在日本の都市部で走る電車と比べてもかっこいい車両だ。かつての東側社会でこんなものもデザインされていたのか、と驚く。残念ながら現在炭鉱の通勤輸送はバスが用いられるようになり、通勤列車は運行されていない。この電車も遠からずこの場所で解体されるのだろう。

 

  

 これらはかつて通勤列車の駅だった場所で撮影したもの。通勤列車の運行はなくなったが、現在もこの場所は信号所として機能しているらしい。私がこの場所にいた1時間ほどの間にも石炭列車などの貨物列車がやって来てはしばらく停車し、また走り去っていった。

 

 

 そういう列車の中でも珍しかったのがこれ。機関車ではなく、保線作業員が移動に使うレールバスにより運行されていた。貨車に載っているのはパワーショベル。炭鉱の作業でつかうものだろうか。

 

 先にも述べたように、撫順炭鉱は採掘量が減っており、何年か先には閉山になると思われる。

 しかし、今の日本で見ることができない炭鉱鉄道の列車をここでは見ることができる。今ここへ来れば。電気機関車や貨物車両のファンは楽しいひと時を過ごせる。

 

 

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追記

 中国のインフラの話をすると、

「日本は中国でこれだけのものをつくったのになぜ中国人は日本に感謝しないのか。」

と言う人もいる。

 たしかに「満州」時代に日本の資本でつくったインフラを現在の中国人が利用しているのは事実だ。しかし、それらのインフラは現地の人のためにつくったものではなく、日本企業が現地の資源を利用するためにつくったものだ。

 また、日本の軍や企業は戦闘や強制労働により数多くの民間人をこの国で殺したことも私たちは知っておかなければならない。撫順でも、現地の人達を力で抑えるため、平頂山事件のような事件も起きた。