レンは驚いて動きを止めた。リンは不安げに男を見つめている。
「俺はカイトっていうの。君たちは?」
「……私はリン」
「…レン」
にこやかなカイトに対しリンとレンは不信感を露にする。
「…カイトさん。リンを離してくれませんか?」
無理だろうなと思いつつ言うとあっさりとリンを解放してくれた。

「お腹空いてるの?」
聞かれるまでもない。腹一杯に食べられるのはお金持ちだけだ。
ふたりでコクンと頷く。
「お金とろうとしたのはそのため?」
同じく頷く。
カイトはふたりに近づくと盗みはダメだよと言った。けれど。そんなことは誰に言われるまでもなくわかっている。
カイトがふたりの手を引き歩き出す。
リンが犯罪者として牢獄に入れられるのかと思い顔を青くしている。レンはもうどうにでもなれと諦めていた。


たどり着いたのは小ぢんまりとした家だった。
椅子に座らされてちょっと待っててとカイトは姿を消す。きょとんとしていると服を片手にカイトが戻ってきた。
服をそれぞれに渡すと、また手を引いてどこかに連れていく。どうぞと言われ覗いて見ると風呂があった。

使えということらしい。
そそくさとカイトは姿を消す。


何だかおかしなことになってしまった。
どうしようかとふたりで顔を見合わせる。
悪い人ではなさそうだ。
なら少し様子を見てみよう。
ヤバくなれば逃げればいい。
ふたりでありがたく風呂に入った。
湯があたたかくて、少し涙がにじんだ。