【法勝寺八角九重塔の制作】2 裳階と初重 | 模型による城郭の復元

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紙を使い、往時の城をできる限り正確に再現しようと思っています。
主に建築を主体とした城郭模型の制作記です。

法勝寺八角九重塔を作っています。

 

前回、芯を作ったところまで書きました。

今回は、裳階と初重の制作について記します。

 

裳階(もこし)とは、建物本体の構造とは別に作られた差し掛け屋根のようなものです。

この模型では、平等院鳳凰堂の中堂のように裳階を吹き放しとしています。

 

 初めに裳階の縁を作りました。

 縁は八角形の厚紙を何枚か重ねることで作りました。外側に向かって微妙に傾斜しているので、厚紙を斜めに削ったものを2枚の厚紙で挟むことで、傾斜を作り出しています。縁の部分には板の幅に合わせてカッターで筋を入れました。

 

 次は初重壁面を作ります。壁面となる厚紙を所定の大きさに切りだして、窓の穴を開けます。窓の周囲は内側に向かって傾斜するように角を落とします。そして、普通紙に両面テープを貼って細く切ったものを窓周囲に貼り付けることで、窓枠を作ります。最後に、芯となる本体に貼り付けます。

 

 窓の縦格子については、普通紙に両面テープを貼って細く切ったものを、短冊形の紙に平行に貼り付けて作ります。この短冊形の紙を切り出して本体に接着することで連子窓としています。

 

 さらに、0.5mm、1mm、2mmと様々な厚さの紙を切り出して組み合わせることで柱や長押を作ります。部材の交差部では、勝ち負けを意識して作ります。円柱は2mm厚の厚紙を台形断面の細長い角材状に切り出して、角を落とすことで半円にしています。

 細部の構造は醍醐寺五重塔を参考にしました。

 

初重の壁ができた様子です。

普通紙と0.5mm厚の厚紙は白色の紙ですが、1mm、2mm厚の厚紙は灰色の紙を使っているので、柱の部分が灰色になっています。

 

 

裳階の柱と小壁ができた様子です。

1mm厚の厚紙で作った小壁の部分に、普通紙などで壁付の肘木や斗を貼り付けて作っています。

組物は出組です。壁付の通肘木の上部は中途半端な高さになるので、柱上は実肘木と斗の組み合わせとして、中備は短い間斗束としました。

裳階の柱は角柱が基本です。この塔は八角形の塔なので、裳階の柱は八角柱です。2mm厚の厚紙を方形断面に切り出して、角を大きく落として八角柱としています。

 

 

裳階の地垂木の部分です。

1mm厚の厚紙で作った野地板に、1mm厚の厚紙を切り出して作った垂木を貼り付けています。

全て貼り付けた後に、木工用ボンドを水で薄めたものを全体に塗布することで固めています。

乾燥した後に余分なところを切り落としています。

 

飛檐垂木を作っているところです。

地垂木の外側に野地板を取り付けて、短い垂木を貼り付けます。

 

 

瓦を葺いたところです。

化粧の野地板の上に野小屋の分だけ厚紙を重ね、その上に瓦下地と裏甲を兼ねた厚紙を貼ります。

裏甲とは、垂木の先にある茅負からさらに外側に向かって突き出した板状の材のことです。

下地の上に平瓦となる画用紙を重ね、丸瓦を貼り付けています。

最終的に木工用ボンドを水で薄めたものを全体にしみこませた上で、余分なところを切り落としています。

 

 

裳階上の壁と、初重の軒天井、支輪、地垂木を作ったところです。

壁付の組物は三斗と間斗束が2段に重なる形式です。

 

通肘木は、普通紙に両面テープを貼って細く切り出したものを貼り付けています。

壁付の肘木と斗は、画用紙を切り出したものを貼り付けています。肘木は、下側の辺が緩い弧を描くように角を斜めに切り落としています。斗についても、斗繰の分だけ下側の角を斜めに切り落としています。

 

軒天井、支輪は、ともに普通紙に両面テープを貼って細く切ったものを切り出して貼り付けています。支輪の曲面は、2mm厚の厚紙を丸く削ることで作っています。

 

この後、飛檐垂木を作りました。

 

三手先組物です。

標準的な形式です。

1mm厚の厚紙で斗、肘木、尾垂木を作っています。

本来ならば肘木と斗のかみ合いや斗繰などがあるのですが、ここでは省略しています。

 

1mm厚の厚紙からそのまま斗を切り出すと、厚紙の性質から、重なり合った紙片が分離することがあります。それを回避するため、1mm厚の厚紙を細く切り出した際に、木工用ボンドを水で薄めたものをしみこませて固めています。

 

厚紙を細く切り出すところはカッターで行いますが、その後の細かい切り出しは小さな鑿(のみ)のような道具を使い、上からの圧力で切断しています。

 

 

隅の三手先です。

隅は通常の建物とは違って鈍角になるので、特殊な形式の組物になっています。

隅の斗は本来なら五角形なのですが、省略して四角形にしています。

 

初重組物ができたところです。

 

 

裳階の組物や繋梁を作ったところです。

出桁と、裳階中間にも桁を入れます。

それぞれの桁には、それを支えるための三斗を組みます。

出組の三斗の肘木には側柱からの繋虹梁が組み合っているので、肘木に繋虹梁先端の突出部分を作っています。

裳階中間の桁は、繋虹梁の上に蟇股を置き、三斗と実肘木で支えます。

 

初重の屋根と隅棟を作ったところです。

化粧の野地板の上に野小屋の分だけ厚紙を重ね、瓦下地と裏甲を兼ねた厚紙を貼り付け、瓦を葺いています。

隅棟は1mm厚の厚紙で作っています。先に向けて反り上がるように紙片を噛ませています。鬼瓦と鳥衾は0.5mm厚の厚紙を切り出して作ります。稚児棟も同じように作っています。

 

 

裳階と初重ができました。

 

続きます。