小倉城天守の模型を作る | 模型による城郭の復元

模型による城郭の復元

紙を使い、往時の城をできる限り正確に再現しようと思っています。
主に建築を主体とした城郭模型の制作記です。

 

自分は、お城のどの部分が一番好きか、と言われたら、間違いなく「天守」と答えます。

 

お城が好きなのも、天守が格好良いからです。

 

ただ、天守が恰好良いなんて言っていると、小倉城再建天守みたいに史実に忠実ではなくても格好よくする方向に向かっていく気がして、あまり恰好がよいといってはいけないような感じがします。

 

 

さて、その天守についてですが、年末年始にかけて、小倉城天守の模型を作っていました。本当は、もっと早く記事にしてもよかったのですが、あともうちょっときりがよいところで、、、なんて思っていたら、とうとう、完成してから書くことになりました。

 

 

小倉城天守の模型です。

 

 

制作過程です。

 

まず、図面を用意しました。図面は中村泰朗先生の復元図を使わせていただきました。

図面を1/500に縮小印刷します。

 

まずは、芯となる箱を作りました。

設計図を見ながら、厚紙で箱組していくだけです。

後で壁を貼り付けていくので、壁の厚みの分を考慮して、1.5mmくらい一回り小さめに作ります。

中には、厚紙でたくさん仕切りを入れて、強度を出しています。

 

 

壁を作っているところです。

 壁は画用紙を二枚重ねて作ります。外側の画用紙には、窓部分に四角い穴をあけて、狭間の穴を抜きます。内側の画用紙には、縦格子を作っておきます。そして、2枚を貼り合わせて、芯に貼りつけていきます。

 

 この時点では、まだ気づいていないのですが、1階北側の壁(写真で見ると右側)を上下逆さまに貼り付けてしまっています。塗装しているときにようやく気が付いたので、狭間を埋めて、しかるべき位置にまた穴をあけました。

 

 

1階を支える腕木です。

天守台の形は、ひし形なので、模型の天守台もひし形にしています。

天守台の形状に合わせて厚紙に作図した後、厚紙から腕木部分を切り出しています。

本当は、こんなに張り出してはいないはずなのですが、どこかで数値を間違えたのか、やけに大きくなってしまいました。

 

小屋組みを作ったところです。

小屋組みといっても、ただの三角形の厚紙です。

 

 写真をみるとよくわかると思いますが、最上階は廻縁として作っています。小倉城天守というと、「唐造り(唐作)」などといって、最上階である5階が4階よりも張り出している構造が有名です。すでに指摘されていることですが、僕は、この唐造りという構造は廻縁を室内化したもので、小倉城天守の創建時もしくは計画時は廻縁だったと考えています。

 今回の小倉城天守の模型は、雨戸を開けている状態にしようと思っているので、内側の壁も作っているというわけなのです。

 

屋根を作っている最中です。

瓦は、両面テープを貼った紙を細く切ったものを貼り付けています。

1間につき6本くらい入れています。

 

小天守の芯です。

石垣が微妙に曲がっていいるので、建物も曲がっています。

 

実際の写真です。

少し曲がっているのがわかります。僕はこういった歪みとかが好きなのです。

 

 

壁と小屋組みを作りました。

 

内側です。

 

 

 

すべての屋根ができたところです。

 

垂木を作ります。

垂木は、0.5mm角のプラ棒を使います。1間に4本の間隔で入れています。1間おきに接着した後、その半分、そのまた半分とつけていきます。

軒裏に直につけるのは困難なので、普通紙に等間隔に貼り付けたものを切り出して作ります。

 

切り出して合わせているところです。

彫刻刀の平刀を使って切り出します。

 

軒裏ができたところです。

この模型では、出桁造りにしています。軒を1間出したので、それを支えるために、出桁造りのほうがよいのかなと思ったので、出桁造りにしました。

 

最後に棟を作りました。いつもは、なんとなく大きめで作ることが多かったのですが、今回は、本物を参考にして、かなり小さめにしました。

 

これで天守の造形ができました。

以下白模型の写真です。

 

 今回の模型では、復元図より軒を深く出して、ほんの少しだけ反りを強めにしてみました。軒を深く出したのは、最上階の軒の出の寸法だけ、「御城廻書付略之」という文書に記載があったので、下の階もそれに倣うことにしたのです。前述しましたが、軒は1間ほど出しています。

 

舟入からの写真です。

 

大手先門上空からです。

 

北側です。

 

模型は、塗装の前に、木工用ボンドを水で薄めたものをたっぷりと塗布しています。そうすることで、カチカチに固めることができます。鯱や鳥衾なんかは、とても細い部分なので、紙がペラペラになってしまいますが、この処理をすることで、きちんと形が保持していくことができます。

 

塗装です。

 

下塗りをしたところです。

 

屋根瓦の塗装です。

まずは、下塗りの色の上に、ランダムに色をのせていきます。

少し濃い色や少し茶を混ぜたりしています。

 

その後、ほとんど黒に近い鼠色を水で薄め、全体に塗ってスミ入れをします。こうすることで、瓦の凹んでいる部分に絵具が残り、陰影が強調されます。

 

スミ入れで終えようと思ったのですが、少し汚し過ぎた感じだったので、軽くドライブラシをして落ち着かせました。

 

いい感じです。

 

5階廻縁の高欄を作ります。

細く切った紙を格子に貼り合わせて切り出します。

犬山城天守などの現存天守の高欄を見ると、部材がとても細く、軽快な印象を与えてくれます。ただ、模型では、細さにも限度があるので、どうしても本物より太くて大きくなりがちです。高欄が大きいと見た目がとても悪くなるので、本物と同じように、できるだけ小さく、シャープになるように作りました。

 

高欄を廻縁に貼り付けたところです。

自分の中では、結構うまくいきました。シャープさを最優先に持ってきたので、そのかわり、強度は全然考えていません。

 

突上げ戸を作ります。写真は1階ができたところです。

突上げ戸は、突上げる棒まで作りました。今まで省略することがほとんどだったのですが、この小倉城天守の模型については手抜きは絶対にしないと誓ったので、今回は作ることにしました。普通紙を細く切って貼り付けていくのですが、結構疲れます。

 

これで、小倉城創建時天守模型の完成です。

すなわち、創建時、または計画時の最上階が廻縁構造の様子です。

以下、色々なところから写真を撮ってみました。

 

以上、創建時天守の模型でした。

 

とはいっても、今回の模型は、唐造りに改修されている時のものなので、最上階を雨戸に改造します。

 

天守がある近世城郭の模型の場合、どんな模型であったとしても、一番見られる場所は天守の最上階です。たとえ、お城の全体を再現しているような巨大な模型でも、やっぱり、人は皆、天守の最上階を凝視しているように思えます。天守の最上階の如何で、その模型の印象が変わってしまうといっても過言ではないと思います。

ですので、天守の最上階はとても重要なのです。よって、最上階は特別に精魂込めて作ります。

 

雨戸を作ったところです。

雨戸の裏側までは筆が回らないので、最初から茶色になっている紙を使っています。

 

塗装したところです。

 

これで、小倉城天守の模型の完成です。

 

以上、小倉城天守の模型でした。

次は、本丸御殿を作ります。