母が脳出血で倒れる3ヶ月くらい前

夜中の3時頃、携帯電話が鳴った。


なにごとかと飛び起きてスマホを手に取ると

母だった。

当時 父がちょっとした発熱で

入院していたので

1人の家からかけてきたのだ。


具合でも悪いのかと

緊急事態を当然予想したが

拍子抜けの内容だった。



「お母さんさあ、もうお父さんとはやっていけんのよ。離婚しようと思う。」



何を言い出すかと思えば…



特に日頃から離婚話があったわけではなく

何か不満な事を思い出したのだろう。



とりあえず緊急事態ではないことがわかり

一安心。

しばらく一方的な話を聞くことになった。




「離婚してどうするん?」

(意訳: 離婚してどうするの?

80歳ずいぶんすぎてますけど?)




うんうん、と母の話を

聞いているだけの私だったが

途中ちょっと質問してみた。



「おじいさん(母の父)があたしらきょうだいに

 アパートを残してくれたやん?

 あそこに住む。

 1部屋やけどお母さん1人なら充分やし。

 おじいさんもお母さん帰ってきたら

 喜んでくれると思うんよ。おじいさんと

 一緒に住んでもいいし。」


 (途中から祖父、生き返ってますよ)




母の言い分

◯父とは祖父が薦めるから結婚したけど

 失敗だった

 私には他に好き合っている人がいた

◯私は美人だったので

 姉の縁談の時は、

「妹さんの方がいい」と言われるから

 父親(祖父)に外出してこいと

 追い出されたくらいモテモテだった

◯父との結婚を悔いている


とか ウソかまことか

娘が聞きたくないことばかり。




母は父よりもひどく耳が遠い上に

こちらの声など聞いておらず

一方的な発言が

1時間くらい続いた。

さすがに疲れてきて



「まだ明け方だし、私ももう少し眠りたいから

また別の機会に話してもらっていいかな?」

と言ったら


「…あんた 誰ね? 

 その声はくぽ子じゃないね。

 あんたいったい誰なん?」


と怖い口調になった。


「いやいや、私よ、くぽ子よ。」



「いや、どうも違うごたあ。

 あんた 誰なんね!正体を表しなさい!」

(訳: いや、どうやら違うようだ。

  あんたは誰なんですか?)



しばらく押し問答が続き、 

つい声が大きくなったせいか

心配で夫も起きてきた。



なんとかなだめて電話を切ったけれど

すごく疲れて体力を消耗した。




その日は朝から仕事で 

夜はチケットが入手困難の中

やっと取れた

東京03の単独ライブだった。



すごくおもしろかったし

一緒に行った夫は

隣でゲラゲラ笑っていたけれど

私は寝不足で疲れていて

夜明けの電話のダメージが残っていた。

頭の中を母の怖い声が渦巻いて

あまり楽しめなかった。



後日 この電話の件を

母に聞いてみたけど


「お母さん電話とかしとらんよ」

(訳: お母さんは電話なんてしていませんよ)

と不思議そうに言っていた。



これは認知症の前兆?

それとも単に元々の性格?


東京03のみなさん

あの時は

しっかり楽しめなくてごめんなさいね。