カメラを肩から下げて、土手の散歩道を歩いていたら

「何を写してらっしゃるんですか、鳥?」

すれ違った人の良さそうな老夫婦から声を掛けられた。

あまり細かい事を言わず「ええ、鳥です」と言ってしまえばそれで十分だったろう。けれど何故だかつい「カワセミです」と種類まで口にしてしまった。すると

「カワセミですか?綺麗な鳥ですものねえ」

と思い掛けない程、ご婦人からしっかりしたお返事を頂いた。

「暮れからこの正月にかけて、この辺りでよく見かけていたんです。なので写真を撮ってみたいと思って、今日はカメラ持参です」

「そうですか。以前私も、ここではないんですけど、散歩している時にカワセミをよく見かけた事があって、そうすると同じ場所で毎日見られるんですよね。青くて綺麗ですよねえ。『パシャーン、パシャーン』って水に飛び込んで。通いました、そこには」

ご婦人が嬉しそうに笑う。

「じゃあ、その時にもご主人とご一緒に?」

「いえ、その時はこの人は見ていないんです。私だけで見ていました」

本当にお好きなのだ。嬉しくなってしまう。

「せっかくカメラを持って来たのに、今日はまだ見付かりません」

「そうですか……見付かりますよ、きっと」

穏やかに元気付けてくれるその言葉にお礼を言って、お二人と別れる。風もなく暖かなお昼時だ。もう少し粘ってみよう。

カワセミが現れたのはそれからほんの僅かの事だった。ほとんど同時に2羽が飛んで来た。ご夫婦の後姿が向こうにまだ見えている。

ご夫婦が気付く事は出来なかったと思う。けれど、いつもここを散歩しているのであれば、次には見付けてくれるかも知れない。その時には今度こそ、お二人で見る事が出来るようにと願った。

     丸くて可愛いフォルム

 

じっとされていると、これで割と目立たない。

道からそれほど離れていないのに、ほとんどの人が気付かずに通り過ぎる