私が衛藤公雄先生に初めて会ったのは、小学生の低学年のころです(この日の事は、「奇蹟の爪音(小学館)」に少し紹介されています)。当時は衛藤先生の孫弟子(弟子の弟子)だったのですが当時の先生であった青山先生に連れられて、衛藤社中の集まりに行った時が最初です。

 
衛藤先生から、「何か弾いてください。」と言われて、「春の姿」を弾きました。
緊張して、喉がカラカラだったことを今でも覚えています。お聴きになってから衛藤先生が青山先生をお呼びになり、「どのように練習しているのですか?」とお聞きになったそうです。
青山先生が「衛藤先生のレコードに合わせて弾いて練習しているそうです。」と答えると「そうですか。」と嬉しそうにされていたと後に聞きました。
 
帰りがけに衛藤先生にご挨拶をと促され先生の下へ。ドキドキしながら何故か私は先生に言おうと決めていた「握手してください。」の言葉を言っていました。子どもながらに先生のオーラを感じ取り、記念に握手したくなったのだろうと今では思います。先生はニコニコとして握手してくださりました。その手の大きかったこと!目のご不自由な先生は「由布子ちゃんはこんな小さな手で弾いていたのですね。」と優しく言われました。ふと、先生が付けている香水の香りがしました。握手した手にも残っていました。