7月17日(日)晴れ
3:00起床。4:00出発。
大山へ! (またかよ。)
夜明け前、車で走る国道313号。
山間のみち、遠くに見える山並み、
窓を開けると夏とはいえ薄ら寒くさえ感じる朝の冷気、
薄明るくなってきた暁の空。
ふと思い出した。
(ああ、この雰囲気、いつかの・・・
そう、もう15、6年前になるか、アラスカへ行った時の、アンカレッジからデナリ国立公園へ向かうバン・・・)
あれは生まれて初めての海外一人旅。
バンの乗客は全部白人。
日本人は僕一人。
心細いながらもとてもワクワクして実に楽しい気分だった。
あの時とそっくりな雰囲気。なぜだろう?
ここは日本だから心細いことはないが、このワクワク感。
あの時は人生初体験。
ということは、なにか今日は人生初体験的な事が我が身に生じる前兆的しるしではないのか?!これは!
と、独りだからいろんなことを思い巡らせる。
で、また大山かよ!?とあらぬ疑いをかけられる前に、一言申し添えておきます。
惚れちまったのよ、ぼかあ。大山にです! I love Daisen! ですな。
明地トンネルを抜けると、この日は一幅の墨絵のようなこんな幻想的な景色。
山頂の雲は薄い。
これは、もしかしてもしかすると?!
大山縦走リベンジなっちゃたりするかも!!
と、ウキウキワクワク。
早朝のモノローグから導き出された印象はまんざら思い過ごしでもないかもしれない。
こんな美しくも有機的な風景を見ながら、
7:00大山寺駐車場着。
7:10登山開始。
こんなにもクッキリハッキリした御姿!
まるで(おいでおいで)をしているように見えちゃうから、
イタイなあ、俺も(^_^;)
三鈷峰頂上着9:00前。
2時間弱で登りきってしまった。先週は初めてだったから、というのもあるが3時間かかったのに。
も~この天気の良さに、アップテンポになったようです。
シモツケ
三鈷峰頂上から望む大山
クガイソウもぼちぼち咲き始めてきました。
1週間で随分と山の様相も変わっている。
自然の活動に停滞ということはない。
三鈷峰からユートピア小屋まで折り返す。
まだ9:30。
時間に余裕もあり、この素晴らしい天気、
そして何よりこの日は風がほとんどなかった!!
これは天祐である!
(もう行くっきゃないでしょ!大山縦走!)
このチャンスを逃したら、こんないい条件の日に来れる日がまた再びあるかどうか?!
そして、まずは剣ヶ峰(大山最高峰1,729m)へ向かう!
ここで、図解による大山全容を見て理解を深めておこう。
http://www.hotel-daisen.jp/tozan/routemap/yutopia/body01.gif
この図に見るユートピア避難小屋から象ヶ鼻~天狗ヶ峰~剣ヶ峰~弥山と歩く縦走路。
これがこの日の目標だが、とりあえず剣ヶ峰!
いや、その前に先週ビビッて引き返した天狗ヶ峰が第一関門!
この一週間、この日のためにイメトレをした!(オーバーだね)
そして、自分なりに導き出した大山縦走攻略の鍵は?!
足元のみ見て、その下に続く奈落の底はなるべく見ないようにする。
この啓示に従って、先週ビビッて引き返した天狗が峰手前はなんなくクリア!
風がほとんどないのも幸いであった。
そして、天狗が峰(1,636m)到着!
天狗ヶ峰からデジカメで撮影した。
(こんなことならもっとちゃんといっぱい動画を撮ればよかった
)
そして、続いて剣ヶ峰へ!
天狗が峰から剣ヶ峰は普通に問題なく行ける。
そして、大山の真のピーク(山頂)剣ヶ峰(1,729m)登頂!
剣ヶ峰に到着すると、一人先客がいるようだが、ザックだけ放置してあって姿が見えない。
少しすると、近くの藪の中からもそもそと一人の女性が!
(こんにちは)と声を掛けようとするが、すぐさままた藪の中に入っていった。
(何をしてんだろう?!うんこかなあ?)
じきにまた藪から出てきたので、即効「こんにちは!」と声を掛けた。
すると、なんとなくぶっきらぼうに小さな声で「こんにちは。」と返しただけで、
自分のザックの所へ行ってごそごそと何かしている。
目深にかぶった帽子で顔もよく見えず、
大体女性独りでこの剣ヶ峰まで登って来ること自体が珍奇な感じがするのに、
その上挙動不審なのでそれ以上深入りしないことにした。
剣ヶ峰からの絶景を楽しみつつ一服していると、槍ヶ峰から登ってきたと思われる2人の男性登山者がやってきた。見たところ大学生らしい。山岳部の先輩後輩といった感じで、
先輩「じゃあこれから弥山まで行って、折り返してここで昼飯にするから。」
後輩「はい、了解です。」
と、僕の前を通過しながら普通に言っていた。
僕(!!なんと!あのラクダの背を2回も渡るということですか?!ようやるわ、若いって、す、すばらしい
)
そして、その先輩の方の顔が見えた。
一見おっとりしたやさしそうな感じの浅黒い顔の中で、異様な光を放つその狂気じみた目の色を、僕は見逃さなかった!
こんな目は太平の世の日本の日常ではあまりお目にかかることはできない。
辺鄙な海外旅行の地で出会う個性的な旅人にも共通の色を見出せる。
これは、非日常の快楽に耽溺した者の目の色でもあるように思える。
この大山縦走路における死と隣り合わせの、表向き通行禁止となっている危険地帯に足を踏み入れた冒険者の悦楽を、彼の目の中に見た僕は舞い上がるような喜びと共に、
(よし、決めた!弥山まで縦走完了してみせる!)
実は剣ヶ峰まで登ってくる間に、他に3人(みんな別々)の登山者とすれ違っていた。
2人はユートピア小屋~剣ヶ峰往復。
1人は弥山から縦走してきたと言っていた。
そして、この縦走者は普通のおじさんで、どうみても体育界系という感じではなく、どちらかといえばオタク系な感じだった。
僕は、正直内心(この人行けたなら、俺も行ける!)と大いなる希望を持ったものでした(^∇^) 失礼(^_^;)
そんなこんなで、例の大学生らしき2人組の登山者が弥山へ向けて去って少し後、僕も弥山へ向けて腰を上げた。
すぐに、また1人の登山者とすれ違った。
少し話すと、弥山から縦走してきた。ラクダの背はきつかった。跳び箱またがり状態でなんとか渡った。とのことだった。そして、「今日は弥山までの縦走者これで6人目じゃわ!」と言っていた。
この登山者もまた普通のおじさんで、眼鏡をかけてカメラを首からぶら下げて、どうみても体育界系というよりもオタク系な感じだった。
またもや、僕に勇気を与えてくれた!(^o^;)
直線距離にして1kmくらいだろうか、そこに弥山山頂が見えている。たくさんの人がいるのが小さく見える。実に行楽日和ハイキング気分満喫といった雰囲気がそこにはある。
しかし、視線を目前に向け変えると、そこには現実が待っていた!
ラクダの背にとうとうやってきたのだ!
前方には、距離が縮まって先ほどの大学生2人がまさにラクダの背の真ん中で格闘中!
あまりのスリルにか?奇声を発しながら、しかしとても慎重に歩いている様子。
彼らが無事ラクダの背を通過した折を見計らって、
僕はこの自然の創り出した絶叫マシーンへと一歩歩を進める。
幅20cm足らず、最も狭いところでは足幅ほどしかないような道。
しかも砂礫でいかにも滑りやすそう。
そして、左右とも切れ落ち断崖絶壁。
攻略法「足元だけ見て谷底を見ない。」を常に心がけ慎重に歩く。
すると、意外にも先週感じたような恐怖感は感じない。
しかし、さすがにコブから降る時なんぞはかなりビビる。
なにせ滑りやすいし、岩があっても脆くて手か足をかけようものならグラグラしているものがある。
無防備にこんな岩に身を任せようものなら、岩もろとも崖下に転落である!
尻をついてズリズリと少しづつ滑り降りるように降りてゆく。
こんな時は極度の緊張から手足に必要以上に力が入ってしまうものだ。
しかしそれも命取り。
そう感じた時、すぐさま啓示が!
「口角を上げ、リラックス。」
口角を上げる=笑顔になり、笑顔を作ることで条件反射的に筋肉は弛緩する。
人体の自然な仕組みだ。
最も恐怖を感じるコブの急な降りをクリア!
降りた地点がまた20cm足らずの幅しかない。その先は更に縮まって足幅くらいじゃないか?!
一瞬も気を抜けない!
が、啓示を心に念じながら、
中腰になって手を着き、バランスをとりながら、慎重に一歩一歩。ときに小走りで通過。
(こんなところ先週の強風の中とても渡れるもんじゃない!)と改めて思う。
四肢をはじめ五感に全神経を集中して、
とうとうラクダの背最後と思われる場所を通過して、ひと安心。
ついにこの縦走路の核心部をクリアしたのだ!
遠くに見えていた行楽雰囲気満載の弥山山頂もことのほか近くに見えてきた!
振り返れば、今通ってきた道。
この後も結構危険な場所があったりしたが、もうラクダの背ほどではない。
無事通過して、とうとう弥山到着!縦走完了!おめでとう!
今までの血の凍るような孤独の闘いなど誰知ることもない、この天上の楽園で人々は思い思いに休日を謳歌する。
山頂で昼食といきたいが、こんな混雑じゃあゆっくり飯も食えない。
すぐ下の山小屋まで降りよう。
木道を歩いていると、先ほどの大学生2人組が木道の脇でその他大勢の登山者に混じってすっかりくつろいでいるではないか!
僕は思わず先輩の方に声を掛けた。
僕 「槍ヶ峰から登ってきたんですねえ?あそこも危険なんでしょう?」
先輩 「ええ、危険ていうか、藪が凄かったですね。藪コギ大変でした。ハハハ」
僕 「そうですか。まあとりあえずは、おめでとうございます。」
ほんの1時間ほど前に剣ヶ峰で見たあの時の目の色は、その時の大学生からは消えていたように見えた。
やはりこの日常的穏やかな風景の中では、普通に戻ってしまうのか?
はたまた太平の世の日本の一般的社会生活になじむための和光同塵的協調性を身につけていると見るべきか?
共に戦った戦士という感じをどこかに感じながら、またもしどこかの山で再会することがあったらじっくりと会話することになるだろう、と思い彼らの未来に祝福あれ!と心に念じた。
山小屋まで降りるが、そこも人、ひと、ヒト!
なるべく人の居ない場所に陣取って昼食を摂る。景色を楽しむ。
飯を食べ終わってゆっくりしていると、僕の隣に外国人男性が座った。
麦藁帽子にアロハシャツ、半ズボンに運動靴。
およそ登山とは思えないお気楽な格好。
まあ大山の夏山登山道をこんな天気のいい日に登るならまあいいだろう。
富士山をスーツ姿に革靴で登っていた外人がいた、という話を聞いたことがあるがそれに比べればお上品?なものだ。
その外国人と少し話をした。
ドイツ人で、東京に仕事で来ている。半年ほど日本にいる。今回は2泊3日の休暇で、鳥取砂丘や海、そして大山に登りに来た。
僕は、大山をなんで知ったのか?尋ねた
なんでも外国人向けの日本観光スポット紹介のサイトがあってそこに大山の美しい姿の写真があったので、ぜひ来て見たいと思ったらしい。富士山にも登る予定とのこと。
そして、大山に登ってびっくりしたのは、女性が非常に多いということだったと言う。
たしかに、見たところ女性の割合の方が多く、6~7割は女性じゃないかと思われる。
が、これは夏山登山道だからだろう。三鈷峰への登山道は登山者自体が夏山登山道の半分もいないくらいではなかろうか。そしてそのうちの女性の割合と言えば、2、3割ってところじゃないだろうか?
だから、今流行りの山ガールとの出会いを求めるなら夏山登山道に限るが、なにせこの混雑!
僕は遠慮したい、と思った。
登山者の多さに驚くドイツ人に、
「日本人は自然を愛する国民だからね。」
と言ってみた。
ドイツ人は、「うん、その通りだ。」と神妙にうなづいていた。
下山。
夏山登山道はヒト、ひと、人!人だらけ!
列になって渋滞しとるやんか!!
(夏の夏山登山道は金輪際来たくない!)と思った。
が、すれ違う若くてプリティな山ガールを見ると、なんとなくそんな誓いはいつでもくつがえされる男の性というものをこの偉大なる山のエネルギーと共に体の奥に感じるのだった。
無事下山し、車で帰路につく。
帰路途中からの大山。
これもまた大山の姿。
なんとも女性的なすべてをあたたかく受け容れてどっしりとそこにある。
その姿は日本の肝っ玉かあさんの姿そのものにも見える。
ほんの数時間前の命の危険をも感じさせる荒々しい姿。
それは受け入れるというよりも我々を命ごと吸い込んでしまうブラックホールのようで、
肉体の繋囚たる本能には恐怖しか与えない存在となる。
いずれも同じ大山。
僕はこの両極端とも思える姿に偉大なるカオスを感じて、そこに大きな魅力を感じて仕方がないのだ!
鍵掛峠からの大山はまたこのうえなく素晴らしい雄々しい姿!
この写真に見る山頂部右端の裏側の見えない所に三鈷峰があるはず。
そこから写真の山頂右端の高い部分がたぶん天狗ヶ峰。
真ん中より少し右の出っぱった部分が剣ヶ峰。
左端の小高い部分が弥山。
だと思う。
この山容はまさに本日の我が努力の成果を目の当たりに見せてくれる。
我ながら、よくやった!
やはり早朝運転中に感じた印象は、この時を予感したものに違いなかった、と思ったりする。
とすると、この日の成果は僕の個人的な旅の思い出の代表的な一ページとして心に刻まれることになるのだろう。
それは、これまでの旅の思い出と同じように、何かの拍子にふと思い出しては、静かな悦楽と言い知れぬ達成感や爽快感を心に蘇らせるのだろう。それは時や場所に影響されるものではない。
あくまでも僕個人の世界。
何ものも侵すことのできない神聖な領域。
「生命謳歌想い出リスト」とでも仮に名づけようこのリストをめくって見ては、遠い目になり愉悦の笑みを浮かべていたとしたら、そんな時はもしかしたら僕もあの大学生登山者のような狂気じみた目の色をしているのかもしれない。
I love Daisen!
Daisen loves me,too!