月に一回 日曜の午後に 地元の公民館で無料映画上映会がある。僕も今まで「泥の河」「老人と海」「乱れ雲」「地球防衛軍」などを見てきた。本日は黒澤明の「羅生門」である。


 久しぶりに見た「羅生門」だっただけに 色々と発見があった。


 芥川龍之介の原作を得た黒澤が創った「羅生門」は 人間の不条理を描いた心理劇だと言われる。それはその通りだと思うのだが 今回 見ていて凄みを感じたのは その心理劇に「滑稽味」を加えた 黒澤の天才だ。


 主役の三船敏郎は すでに大スターだったと思うのだが とにかく 下品で粗野な役をこなしている。「七人の侍」でもそうだが 三船が三枚目役を上手に演じたことは 実はとても大事な事実なのだと思う。


 三船が下品であったことで ともすると理屈っぽくなりかねないこの映画に 生き生きとした力を与えている。僕は これを見て つくづく この頃の黒澤明が持っていた躍動感を思うのだ。これは例えば 黒澤の後年の「乱」や「影武者」といった作品が 静寂を旨としているのと対照的である。

 見終わって 外に出る。外は祭りだ。街中には 笛や太鼓の音が溢れている。雨が通り過ぎたせいか 涼しい。猛暑であった今年の夏も終わりつつある。