【連載④】国立ランブリング 冬の旅人 小山伸二 | 国立情報WEBマガジン くにたちハッピースポット

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国立ランブリング
【連載④】国立ランブリング


冬の旅人        小山伸二


甲州街道の南側からはじまる水の傾斜
あらたまった年の滴
まるで天から降りてきた伝言のように光る
淋しい頬笑みを湛え
揺れている言祝ぎのとき


ひとが発ち、そして帰る場所
その門前で酒を呑み蕎麦をすする
晴れ着の行き交う街道
ひとの世の駅になって
居なくなったひとを数える


境内の梅の庭を巡る
本の形にくり抜かれた石碑に触る
この町の文学に出会う
あかね色の雲が西に消えていく
冬の風はしずかだ


参道に蹲って
明日の気配に立ち上がる花の小影
その名前を知りたい
空を素読するひとのように
手を打ち手を結ぶ




詩 :小山伸二
写真:クラウドナイン


◎国立ランブリング「創作ノオト」
年末年始、ぼくが体調を崩しているあいだに、
ぼんやりと正月が始まった。
今回の国立ランブリングの舞台は谷保天満宮。
甲州街道には谷保天満宮が十世紀からあるそうだ。
国立を歴史的に支え得る谷保村の精神的な
センターがここにあるのだろう。
だいぶ人波が収まった境内のはずれ。
梅林には堅いつぼみの花たちが息をひそめている。
ぼくは、しずかなここで、
山口瞳さんの石碑のなかの世界を、しばらく眺めていたい。


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<プロフィール>

小山伸二
国立在住。詩人。
詩集『ぼくたちは、どうして哲学するのだろうか。』
『雲の時代』(いずれも書肆梓・刊)。

福間塾に参加。


クラウドナイン
小山伸二と清水美穂子による詩と写真のユニット。
https://www.facebook.com/cloudnine.sm





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