Ψ筆者作「遠雷2」 F30 油彩(初出品)
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  しかし、「平家物語」や「方丈記」の語る諸行無常の通り、「歴史を振り返っても、経験的に言ってもそのほとんどはイリュージョンである。それらに支配され翻弄され眩惑され、本人もそれに終始し、現象の底流にある「本質」を知らず、それをつかむことなく終わるとはイリュージョンの人生のまま終わるということになろう。
 しかしこの線引きは結局は個人の資質や価値観による。現象から与えられたシステムやメカニズムを受け入れ、その中に自我の存在の如何を求めるという人種、これを広義の「保守」という。これは、欲や本能の赴くまま、無理をせず、与えられた既成の価値体系や因習に逆らわず、流行ものや情報操作、世論誘導に無批判に乗る。これは、本質を求めるための能力や努力は要さないので楽であり、自我も現象のまま終わるので、悔いが残る余地すらない。
 ともかく窓の外は現象の霧深く、本質や真実を見出すには、相応の能力や努力、知性や感受性を吹き込みその霧を晴らさなくてはならない。有史以来、多くの科学者や哲学者、芸術家は、その現象の底流にある本質や真実を求めてきた。現象が孕む矛盾や誤謬、不合理をほったらかしにできない、自分なりに回答を出さなければならない、そこに人生の命題を見出したからである。
(つづく)