
表記通り、これは前回アップの作品の表面にある左右観音開き扉である。つまり、「夜の宴」を中央に、左右縦長で各半分サイズの絵があり、それを閉じればこれが見えるということになる。これは中世の祭壇画の一部にあるパターンを踏襲したものだが、当然それはもっと細かな技巧と材料を使った華麗なものである。
これはもう十数年前に作ったもので、その後作品は描かず放置していたものだが、今回の素材が余ったこともあり作品と扉の塗装を行って一応の完成を目指す。サグラダファミリアではないが、完成まで数十年を要した気長仕事ということになる。それにしても余程暇だったのだろう、よくこんなものを作ったものだと我ながら思う。
左右とも小さな窓があり、そこにさらに0号の作品を収納できる。オブジェは石膏を膠で固めたもの。石膏と膠は当時描いていた鶏卵テンペラの材料の残りであり、作品は今回のアフレスコ、アセッコの残りである。いずれも大量に残り捨てるのはもったいないという「貧乏人根性」の所産である。因みに大量にパレットに残った油絵具を惜しげもなくふき取り捨てる人がいるが、材料代に困った経験がないのだろう。筆者は地塗りに使う。
さてこの機会に、以前の「佐伯祐三手製キャンバス」とこの「全素材踏破」シリーズに使った素材を全部描き出してみる。支持体から描画材に至るまで総てである。これは美術史を支える素材史そのものであり尚一部である。今日の簡便な素材やテクノロジカルな画法の軽さを感じざるを得ない。
使用素材:板、麻布(粗目のドンゴロス)、硫酸カルシウム(石膏)、ソチーレ、消石灰、砂、カゼイン、鶏卵、膠、防腐剤、金箔、銀箔、箔下砥の粉、炭酸カルシウム(白亜、胡粉、重質炭カル)、ダンマル樹脂、テレピン、スタンドオイル、「太陽に晒した」リンシード、同ポピー、ベネチアンターパンタイン、顔料他
↓ 筆者作 ポケット内絵画(二点とも0号 全卵テンペラ、金粉)
