
「テンペラ」とはラテン語の[temperare]を語源とし、本来は混ぜるとか溶かすなど広義の意味を持ったようだが、素材の世界においてはその意味がだんだん狭ばめられ、「エマルジョン」(水と油の双方になじむもの)であること、乾燥固化したあとは水に溶けないものとかの概念で絞られ、それが今日ではほとんど鶏卵を媒介とする「卵テンペラ」を指すようになってきた。従ってその定義では油彩は水に馴染まないし、アクアレル(透明水彩)、グアッシュ、膠は水に再溶解するので「テンペラ」ではないし、アクリルは水に溶け乾燥固化後再溶解しないが、エマルジョンではないのこれもテンペラとは呼べない。
カゼインは元々牛乳から採り、鶏卵に含むレシチンと供にそのエマルジョン性によりそれぞれ「テンペラ」であるが、先に述べた通り今日では「カゼイン画」とした方が分かり易い。
カゼイン溶液はアンモニアでも作れるが、フレスコで使用した消石灰溶液で作った。それを水で希釈し「カゼイン膠溶液」を作りこれで顔料を溶く。固着力は鶏卵を凌ぎ発色もフレスコに迫るが、扱いは厄介である。時間が経つとゼラチン状になり使いものにならない。