Ψ筆者作カルトン 
「聖母被昇天」 石灰、定着剤 (画像削除)
ウルトラマリンという色は筆者も油彩では多用している美しい便利な色であるが、ことフレスコにおいては最も扱いの厄介な色材であるということは、マックス・デルナーやクルト・ヴェールテその他の技法書でも述べられている。これは耐アルカリということで問題なのではなく、変色、粉化、定着不全等のフレスコモルタルとの相性というべき独自の問題であるようだが、代替え品を使う以外には手がないが、その便利さと色味に魅かれ、筆者は見切り発車している。
 キリスト教の図像体系では聖母マリアの衣装は感情と知性の象徴として赤のキトンと青のマントと決まっている。その逆でも赤と青は変わらない。因みに「無原罪の御宿り」だけは純潔を意味する白である。そこで油彩以前のフレスコ、テンペラではその青は何を使っていたが問題となるが、希少価値ある高級品のラピズラズリはその聖母の青以外には使ってはいけなかったという説があるが、共に高貴なモティーフと素材から納得いく気がする。
  さて先に述べたが、湿式フレスコが一般に浸透しない最大の理由はその厄介な下地作りにあるが、もう一つ、濡れたうちに描かなければならないという描画上の時間的制約である。逆に言えばそうした困難を克服すればフレスコという素材の持ち味だけでも、見応えのあるものとなる。内容がその素材の特殊性に助けられているという絵はしばしば見るがそれはフレスコにおいて顕著であろう。
 ともかく、ジョットやデラ・フランチェスカはどのようにしてあの充実したフレスコ画を描いたのであろうか、今般その技法の一端を探ってみた。
 (つづく)