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Ψ筆者作 ブルガリア印刷物模写
  テンペラ・マグラ(卵黄テンペラ)F10
 下記で「美術史」に関する筆者の認識を示した。
 趣旨は美術史とは同時に素材史であり造形史であるということである。この流れを自ら実作において追体験したいと20年以上前から思い、ライフワークである油彩制作と併せて、各素材に取り組んできたが、今般最後に残っていたフレスコを制作、これで一応の美術史上にある、油彩、テンペラ、フレスコの、「タブロ―」という概念で括られる、相当スケールある二次元造形の主要三素材を体験した。
 ただ各素材にはさらに細かな技法のヴァリエーションがある。例えばテンペラには、鶏卵以外のもあり、鶏卵を使うものもマグラ(卵黄)、グラッサ(全卵・油性含む)、ミスタ(同左)とあり、フレスコにも一般に湿式、乾式、ポンペイ壁画等技法の相違があるし、混合技法となれば今日の合成樹脂絵具を含み数多ある。
 例えば上記グラッサとミスタは描法の相違による区分であり材料は同じ、逆にダヴィンチの「最後の晩餐」などは支持体はフレスコ、描画はテンペラという、単純に区分できないものもあるが、原理的には上記三者に大別される。
 当書庫においてその材料と大まかな技法をまとめてみた。なお、透明水彩、アクリル、アルキド等はとりわけ区分すべき意義を認めないのでここでは取り上げない。
 
 テンペラ・マグラ(卵黄テンペラ)
 上掲の作品は、東方正教会のイコンを今日的にヴィジュアル化したものの模写であるが、技法・素材は概ね本来のイコンを踏襲している。
〇支持体 板に麻布、硫酸カルシウム
〇材料  箔下砥の粉、顔料、金箔、銀箔
〇媒材  鶏卵(黄身)、水  
(つづく)