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Ψ筆者作  「遥かなる峰」F30 油彩
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Ψ筆者作  「白い岩」 P20 油彩イメージ 1
 
 印象派が無彩色を使ったか否かは模写すれば明らかであろう。有彩色と白だけではあのような画面にはならない。一定の画面の品格と落着き、特有の「パステルトーン」は無彩色の介在無くして考えられない。晩年のモネやルノワールのような、フォルムが色彩に溶け込むような画面を以て、印象派の総てを語ることはてきで
 ない。いずれにしろ画家が自らの造形的信念を持ち、それを制作で実行するのは自由であるし当然である。しかし、第三者に一般的造形技法について語る場合は慎重であるべきだろう。
 上掲の拙作三点は勿論無彩色によるトーンの繋がりによって描いたものである。これは、先に述べた黒の長所たる落着き、詩情、品格を油彩のコク、味わい重厚さと結び付けたらんと欲し、黒の欠点、即ち暗さ、活気の無さ画面の硬さのリスクを顧みず、自己の造形嗜好に従って描いたものである。
 色彩を重視する傾向にある印象派以降、内外を問わずこのような傾向の作品は極少数派となった。しかし絵画芸術は、造形は時代の顔色を窺う必要はない。人間社会の御都合主義を追えば取り残されるのは自分自身である。。「時代は繰り返す」という言葉もある。どこでどう変わるか分かったものではない。
 いずれにしろ、現在このような傾向は一般的ではないし、他人にも薦めない。我田引水で「黒」を重視せよと言っているわけではないのである。しかし、件のY氏の作品を見たがこれも一般的でないと言えば一般的ではない。
氏の作品は概ねトーンの繋がりではなく、明暗の対比で出来ている。だから風景はいつも好天となる。自然は天気の良い日ばかりではない。曇天の日もある。
 氏はベテランで絵画指導者としての立場もあり、著作の予定もあるようだが、「色彩にたよらず」トーンの繋がりをしっかり追うというのも初心者にとっても大事なことである。立体感、量感、遠近感、ヴァルールこれらは的確なトーンの繋がりの把握なくしては得られない。せめて「両論併記」で願いたい。