
目次
第一部 佐伯祐三その創造と病 第二部 佐伯芸術の土壌
白矢勝一 吉留邦治
一.佐伯祐三との出会い 序に代えて 一.佐伯の周辺
二.佐伯の軌跡 1.本邦洋画の黎明
1.生い立ちと性格 2.在野の萌芽
2.推論・なぜパリに急いだか? 3.夭折の画家達
3.佐伯周辺の女性たち 4.「中村屋サロン」と下落合
4.米子の足の悪い理由と年齢についての考察 5.今日に生きる佐伯芸術 5.佐伯作品その後の展開
三.佐伯の芸術 二.佐伯の造形性
1.「このアカデミズム!」 1.手製のキャンバス
2.早や描きの秘密 2.下落合時代
3.佐伯の線
4.モランの荒行
5.もう一つの傾倒
6.佐伯と芹沢光治良
7.佐伯と宗教性
8.実景と佐伯の造形性 」
四.佐伯の病気
1.佐伯は精神分裂病!
2.結核について
3.死の引き金かモランの荒行
4.発病
5.精神に異常が
6.佐伯と医師
7.さて佐伯は何を注射されたのだろう?
8.まとめ
五.佐伯の晩年
1.プロローグ
2.脱走事件
3.なぜクラマールの森へ行ったのか
4.自殺未遂はあったのか
5.考察
6.さて真実は
7.佐伯の死亡日は何日?
8.佐伯の死の三日前
六.贋作事件
1.経緯
2.「吉薗資料」の破綻
付録 因縁話
(佐伯祐三贋作事件に関し)吉薗周蔵氏由来の「佐伯作品・資料」に関する報告
起草 小林頼子(現目白大学教授)特別研究員
提出 1995年11月13日
(抜粋) 《…佐伯関連の出版物は、近代日本画家の中でも群を抜いて多い。しかし、そのほとんどは、思い出話か、生涯の軌跡をいささかロマンティックにたどった評伝か、傑作礼賛の名作集か、佐伯作とされた所以をあきらかにしない全作品集と銘打った写真集に近いものか、の何れかに終始している。佐伯没後70年も近くなった今日、来歴等の基本データと様式分析とを全作品に添えたカタログ・レゾネを刊行し、従来、佐伯真作とされてきた作品について全面的な再検討加える時期にきているのではないか。その種の真に学術的出版物なくして佐伯作品の真贋について開かれた議論を展開することも、吉薗作品への確かな答えを出すこともできないと考えるのは、おそらく私一人ではあるまい。…》
当書籍はこうした認識を踏まえ、それに応え得る、佐伯の全側面を網羅した本邦初めての評伝と自負するものであります。御一読いただければ幸いです。 著者

Ψ筆者作「昔日の陽射し」 F30 油彩 (こちらが原作に近い)