Ψ 筆者作 「夏の碌山美術館」 F6 現場スケッチにアルキド樹脂絵具で着彩

油彩において、ナイフで削ぎ取ったり、紙やすりを使ったりすると何某かの効果が得られる。これを私は「マイナス画法」とか「引き算画法」とか呼んでいる。これと絵具層を重ねる「プラス画法」と組み合わせてコクのあるマティエールができる。これが油彩の一つの持ち味であるが、描写主義たる「古典主義」は、それはそう多用できない。
だからといって、「アラプリマ」ではとても油彩本来の重厚さは引き出せない。古典主義はその辺りの問題点のを地塗りやグリザイユなどの「仕込み」や圧倒的な表現力でカバーする。
ところで、 永いこと敬愛するコロ―を研究してきて、彼の画法が、その引き算画法と[考え方]において脈絡を持つということに気がついた。その造形性の秘密とは、一言で言えば「ヌキの妙」である。絵具層、色味、フォルム、ヴァルール、明度、すべてにおいて、自然の形相を追い只管「プラス造形」を行うのではなく、時に応じ「抜く」のである。
美術史上、このような「ヌキ画法」で独自の絵画空間を創造した画家はコロ―以外に思いつかない。
これは理屈でなく、体験を通しての実感である。