上掲作品は地塗り無し、80%を現場で描いたもので、なお現場での仕上げを予定している。勿論一回ではない。5回ほど現場でイーゼルを立てたものの一つ。臨場感を残すため細かな描写は行わない。
古典派系の風景画家は、現場でスケッチなり下絵なりを描き、アトリエで仕上げるという手法を多くとったようだが、その間に独自の造形性やイメージ、観念などが入り込み、現実の風景とは多少違った絵画世界が出来上がったというのは、オランダ風景画やコローなどの作品を見れば明らかである。
一方印象派風景画は、そういう意味での作為は入る余地なく、純粋に自然と対峙したものであるが、そのかわり自然そのものの持つ、光や色彩、大気遠近法から時間的概念の表現など、汲めども尽きないその造形的価値を引っ張り出すことで一時代を画したものと言える。
どちらも風景画としての魅力に溢れるものであるが、自分の問題として捉えた場合やはり前者だろう。ともかく現場は健康的で楽しい。