わずか15名90余点の小さな展覧会ではあったが、期せずして本邦美術界の縮図的な趣のあったものと思えた。
 先ず極めて大雑把に言えば本邦具象絵画は「描く絵」と「作る絵」とに分けらる。因みに私は前者を「表現主義的傾向」後者を「造形主義的傾向」と便宜上呼んでいる。 前者は一般に「人物画」、「風景画」、「静物画」などという言い方をされるもので、西洋美術史の流れでは印象派辺りまでの傾向に系列される。ただし本邦ではそれ以前の本格的古典派となるとほとんどない。一方後者は同様な言い方をすればセザンヌの後期印象派以降、現代美術までに見られる、特別なモティーフ、フォルム、色彩、構成、マティエール、素材,、など造形要素そのものの可能性を探る傾向であるが、これに西洋美術史には余り見られないと言う意味で、日本人特有の造形資質(行き過ぎた場合工芸品的になる)のようなものが加わった「絵作り」の妙が追求される。
 これも大雑把だがわかりやすく言えば、日展系団体は前者、非日展系団体には後者が多い。今回の展覧会にはその傾向、とりわけそのパーセンテージがそのまま反映された感じで、「描く絵」と「作る絵」の比率は3:7ぐらいで後者の方が多かった。
 非日展系の自由美術協会系の作家と日展系の光風会の作家とはそういう傾向の違いを浮き出たさせた。
 一方そういう系列分けとは別の自由な表現も見られ、本来日展系と聞いた新世紀美術協会所属の二名はいずれも「絵作り」に長けていたし、「古さの創造」のパイオニア有元利夫の濃密な「絵作り」と安井賞を争った自由美術のベテラン作家は、今回の出品作を見る限り技術的な意味の「絵作り」のほとんどない人間描写的な表現性をベースにしたものだった。
 一方武蔵野美大を中心とした美大系若手作家に、電車内、飲み屋、猫、車など大上段に構えたテーマではない、日常的なさりげない一こまを絵にするという共通した傾向が見られたのは面白かったが、これは今の若い世代の傾向なのだろうか、それとも今の美大の傾向なのだろうか、偶然か?他に医家芸術から二名、水彩連盟から一名。こう言う区分で言えば、純粋な無所属と言うのは自分だけか!ともかく個人的には次回以降「描く絵」、とりわけ風景画を見たい。