「不可能の代名詞・青いバラ」を描き初めて数年になる。しかし、どうも今一その色彩に満足がいかなかった。
それは青という、物質を抽象化してしまう透明な色彩、、その波長の特質からくるのか光学処理の難しさ、、聖母マリアのマントの表現にしか使われなかったと言う、ラピズラズリから採る超貴重品のウルトラマリン、現代のハイテクをもってしても再現不可能と言われている、ステンドグラスの世界遺産「シャルトル・ブルー」、これに加えて件のバラの色素に青はないところから言われてきた「不可能の代名詞」、(サントリーの青バラなどまだまだだ)、はたまたチルチルミチルから青いザリガニなんてのもあった。等々青にはいろいろな神秘的イマジネーションが付きまとい、それにいつしかオマージュに似た感慨すらを持たされてきたが、そうしたものに類するような色彩を出したいと思っていた。
そしてその追求のためバラの栽培から始まり、毎年季節になれば鉛筆デッサンをやり、ひとたびは油彩での表現においてその好ましい色彩とはトーンの的確な処理によって現れるにのではないかと思い、かなり細部まで描き込んだものとなったが、前述のとおりの不満は残ったままだった。ともかく、いつの間にか「青バラ」は「緑の風景」とともに「ライフワーク」となり、先の個展でもG展でも一部に展示してきた。
最近に至り「光」がそれに大きく関係していると思うようになった。当作はその実験作のようなものである。
この逆光のバラは実際の「ニュードン」と言う品種をスケッチを基に描いたものである。この色と光の関係の「発見」は偶然であったが、求めよさらば与えられんというか、今後是非ものにしたい展開をである。