私の浅薄なバラ知識によるとイングリッシュローズというのはモダンローズの「四季咲き」とオールドローズの可憐で優美な美しさと言う長所を併せ持ったようなもので、バラは本来こういう外観をしていたらしい。
モダンとオールドは1867年のハイブリット第一号「ラ・フランス」を境に分かれるとされている。 「我が師」ファンタンラトゥールはため息のでるようなこういうオールドタイプのバラを描いている。その名が品種名で残っているほど。しかしこれは描く方にとっては難物。余程ハイブリットティーローズなどのモダンローズといわれるものの方が描き易く見栄えもする。
ただモダンはどこか冷たくツンとすました美人のようなところがあるので、どちらかと言うと女性は暖かみのあるホッコリしたオールローズのほうが好きなようだ。絵もそうなのかな?
そのイングリシュローズの故郷イギリスでは1455年「バラ戦争」が起こっている。王位継承をめぐるヨークシャ家とランカスター家の争いで双方の家紋が前者が白バラ、後者が赤バラであったことからこうよばれている。一応ランカスター家が勝利と言う形になったがその後ヨークシャ家との政略結婚などで両家が合体、できた家紋(エンブレム)が白赤共存、その後で作られた品種の「ヨーク アンド ランカスター」と言うのがピンクだからよく出来た話。
さて1857年有名な「ルルドの奇跡」が起こる。聖母マリアが少女ベルナデッタの前に出現したと言う話。ルルドの泉はその神秘の水と供に今もなお巡礼地として世界的に知られている。その際の聖母の特徴的な外観のうちのひとつが両足首に黄色いバラを巻いていたと言う話がある。それはオールド、モダンの境目1867年の10年ほど以前の話なのでその黄色いバラとは当然オールドローズということになる。
だから仮にそういう情景を絵にする場合、そのバラを花屋でよく見かける剣弁のハイブリットティーローズをモデルに描いたらそれは誤りということになる。
当然古典絵画に現れるバラは全部オールドローズ。「美術史学徒」はその辺のとこまでみるんだよ~♪