先ず私は30歳で某都心のデパートで個展をやって以来少なくても何点売ったか覚え当てない程度の数は売っている。だから、市場の諸々の仕組み、流通システムや作品を売るためにはどういうものにしたらよいか、自分を売るためにはどうしたらよいか等の手練手管は、少なくてもこの付近にいる誰にも負けないくらい知っているつもりである。
 また、画商・画廊とか団体系・非団体系の公募展など、その舞台裏話や知らなくてもよいようなことを含め、直接間接に知っているし情報も得ている。つまり絵画をめぐる現実の世界と現に関わってきたのであり、大所高所で理想論や原則論を述べているだけではないのである。

 例えば自分にこういう絵を描きたいというコンセプトがある。それは建売住宅や賃貸マンションのインテリアや壁面事情に譲る事は出来ない。芸術性と市場性の乖離である。
 私の「デビュー時」は、発表価格号2万、画料2割である。つまり10号だと表示価格20万。手取り4万、それでも一定量がコンスタントに売れれば生活できるが思い出したころポツンポツンと売れるだけ。
 とても生業として成立つものではない。それでも何故画家はそれを受け入れるのか?「プロ」でありたいからである。デパートなどで扱ってもらい、年鑑類に載れば「画歴」として実績が残るからである。
 うまくすればそうした実績が積み重なり評価自体が上がる。これが「年鑑評価型市場体系」だ。

 それでもそういう画商との関係ができてる画家は恵まれている方。多くはそれすらにも至らない。「プロ」の実態とはそんなものだ。
 さらにバブル以降画廊もそうだが画商が入っていたデパートそのものがなくなったり、デパート系の美術館が閉鎖されたりるなど、きわめて厳しい経済事情があった。

 私は縷縷述べた事情の、市場性を優先することも、年鑑評価型市場体系で「出世」を図ることにも積極的な意思を持つことは出来なかった。無所属ということを含めて私を巡る今日の状況は以上のような経緯によるもである。
因みに私の名前はここに出てるので関心とお暇があれば探っていただきたい。(表が出るまでちょっと間がある)

 http://www.artcba.com/auction/backno/artistlist.html