ブログ作成の合い間に久しぶり古巣の某コミニュティ覗いたら、「グッド・タイミング」!?「ハッチング」についての書き込みがあった。基本的にはそれはテンペラとかハッチングについての認識の甘さと知識不足からくる場違いの話であったが、直近の当ブログ記事との関係から、看過できない部分もあり一言を要す。
そもそもテンペラに限らず絵画とは芸術としての意義に適うものなら、特定技法に拘泥されず、自由な造形や表現があってよい。当たり前の話だ。ハッチング自体も広義にはデッサンを含む線描、雨降り描きのことである。
しかし、美術史や造形世界で語られるそれはテンペラ等素材と関連して、≪油彩以前の、トーンをつけられない素材における、トーンづけと立体感に係るきわめてアカデミックな技法及びその応用≫であり、今日技法書等で据えられている視点、究められ、応用されている技法とは、ハイレベルなその真髄の部分なのである。
したがって、自由な発想や奔放なフォルムや色彩でできた絵、すなわち写実とかリアリズムと言える傾向でない作品に、常にフォルムだトーンだ質感だ立体感だという、アカデミズムを持ち込んで語ることがナンセンスなように、ハッチングのアカデミックな概念をそう言う作品傾向にわざわざ持ち込むこと自体意味を為さない。
どんな素材もベタ塗りや線描の工夫、グラシ、明度差、色相差を利用した描法によりある程度グラデーションやニュアンスはつけられる。しかしハイレベルのハッチングはそれとは次元を全く異にするシビアな技法なのである。「トーンがつけられない」という時の「トーンのレベル」が分かってないとしか思えない。
以下簡単に整理して述る。先ず「テンペラ」とは 本来はもっと広義の意味と展開があるのだが、一応今日一般的な「卵テンペラ」に限定する。
卵テンペラには
1.卵黄メディウム
2.全卵メディウム
3.全卵メディウム+油性メディウム
の三者が一応考えられる。
1は最もプリミティヴな卵テンペラでルネッサンス前からイコンなどの描法に用いられた。
2は全卵とテレピンで溶いたダンマル樹脂、スタンドリンシード等を攪拌して作ったマヨネーズ状のメデューム。エマルジョンなので大量の油性分を含みながら水で希釈できる。
3は2のメデュームをテンペラ媒材とし、もう一つダンマル、テレピン、ベネチアン・ターパンタインなどで油性媒材をつくり、テンペラ媒材でフォルムを描きおこし、油性媒材で透層着色するという言わば「分離画法」。因みにこの分離画法は油彩のグリザイユ、カマイユなどの技法でも採用される。
テンペラには鶏卵に限らずいろいろな技法があり、画家個人個人でも違ったりしてこれがこれとはっきり特定できない部分も有る。しかし「テンペラグラッサ」とは概ね2の系列にあたり、ルネッサン時代に南部ヨーロッパで多く採用された。
なお、私は「テンペラミクサ」と言う画法は聞いたことがない。「テンペラミスタ」なら3に該当するものと言え、フランドルなど北方で採用された画法。
いずれも油性分を多く含むからと言って、ボカシなどでトーン付けを可能にするものではない。つまり、グラッサにしてもミスタにしても油分の量に関わらず「脱ハッチング」の根拠にはなりえないのである。
ボッティチェルリ等ルネッサンス画家達の例を挙げるまでもなく、グラッサもミスタも≪トーンづけはハッチングを基本としていた。≫
勿論グラッサ、ミスタも今日的な「自由な造形性」の展開は可能だが、こと「トーンをつける」ということに関しての限界は同じ。
これらの技法が破壊された過去のものという趣旨に至っては噴飯を禁じえない。
本邦においては明治以来テンペラが話題となったのは「帝銀事件」ぐらいで、昨今に至りその古典画法が「先祖帰りのルネッサンス」ように注目され、多くの画家や学校で追究されているという事実は「検索知識」でもいくらでも得られるだろう。のみならずエアブラシの画一性を克服したいアクリルのような現代素材にもその技法は進出しているのである。
油彩での採用は言うに及ばずである。私も多く使う。
そもそもテンペラに限らず絵画とは芸術としての意義に適うものなら、特定技法に拘泥されず、自由な造形や表現があってよい。当たり前の話だ。ハッチング自体も広義にはデッサンを含む線描、雨降り描きのことである。
しかし、美術史や造形世界で語られるそれはテンペラ等素材と関連して、≪油彩以前の、トーンをつけられない素材における、トーンづけと立体感に係るきわめてアカデミックな技法及びその応用≫であり、今日技法書等で据えられている視点、究められ、応用されている技法とは、ハイレベルなその真髄の部分なのである。
したがって、自由な発想や奔放なフォルムや色彩でできた絵、すなわち写実とかリアリズムと言える傾向でない作品に、常にフォルムだトーンだ質感だ立体感だという、アカデミズムを持ち込んで語ることがナンセンスなように、ハッチングのアカデミックな概念をそう言う作品傾向にわざわざ持ち込むこと自体意味を為さない。
どんな素材もベタ塗りや線描の工夫、グラシ、明度差、色相差を利用した描法によりある程度グラデーションやニュアンスはつけられる。しかしハイレベルのハッチングはそれとは次元を全く異にするシビアな技法なのである。「トーンがつけられない」という時の「トーンのレベル」が分かってないとしか思えない。
以下簡単に整理して述る。先ず「テンペラ」とは 本来はもっと広義の意味と展開があるのだが、一応今日一般的な「卵テンペラ」に限定する。
卵テンペラには
1.卵黄メディウム
2.全卵メディウム
3.全卵メディウム+油性メディウム
の三者が一応考えられる。
1は最もプリミティヴな卵テンペラでルネッサンス前からイコンなどの描法に用いられた。
2は全卵とテレピンで溶いたダンマル樹脂、スタンドリンシード等を攪拌して作ったマヨネーズ状のメデューム。エマルジョンなので大量の油性分を含みながら水で希釈できる。
3は2のメデュームをテンペラ媒材とし、もう一つダンマル、テレピン、ベネチアン・ターパンタインなどで油性媒材をつくり、テンペラ媒材でフォルムを描きおこし、油性媒材で透層着色するという言わば「分離画法」。因みにこの分離画法は油彩のグリザイユ、カマイユなどの技法でも採用される。
テンペラには鶏卵に限らずいろいろな技法があり、画家個人個人でも違ったりしてこれがこれとはっきり特定できない部分も有る。しかし「テンペラグラッサ」とは概ね2の系列にあたり、ルネッサン時代に南部ヨーロッパで多く採用された。
なお、私は「テンペラミクサ」と言う画法は聞いたことがない。「テンペラミスタ」なら3に該当するものと言え、フランドルなど北方で採用された画法。
いずれも油性分を多く含むからと言って、ボカシなどでトーン付けを可能にするものではない。つまり、グラッサにしてもミスタにしても油分の量に関わらず「脱ハッチング」の根拠にはなりえないのである。
ボッティチェルリ等ルネッサンス画家達の例を挙げるまでもなく、グラッサもミスタも≪トーンづけはハッチングを基本としていた。≫
勿論グラッサ、ミスタも今日的な「自由な造形性」の展開は可能だが、こと「トーンをつける」ということに関しての限界は同じ。
これらの技法が破壊された過去のものという趣旨に至っては噴飯を禁じえない。
本邦においては明治以来テンペラが話題となったのは「帝銀事件」ぐらいで、昨今に至りその古典画法が「先祖帰りのルネッサンス」ように注目され、多くの画家や学校で追究されているという事実は「検索知識」でもいくらでも得られるだろう。のみならずエアブラシの画一性を克服したいアクリルのような現代素材にもその技法は進出しているのである。
油彩での採用は言うに及ばずである。私も多く使う。