そもそも絵描き用アトリエの要件とは、一日中光線が安定する「北向き」が原則。静物画を朝から描いて昼食後再び描き始めたら影が午前中とは逆に出来てしまったと言う経験もおありの方もいるのでは?
北向きだとこのような不都合はない。しかし暗いので明かり取りの大きな窓、できれば天窓がよい。それとも関連するが、大作も制作できるよう天井も高く取る。
パリで友だちになった人のアトリエ付きアパルトマンを訪れたことがある。そこは「高天井、明り取りの大窓、勿論北向き」。しかも公営アパルトマンである。家賃も普通のアパルトマンと変わらないそう。羨ましい限り。
流石に希望者も多く、抽選や順番待ちがあるらしいが、文化的伝統というのか芸術や芸術家に対する行政の配慮が、マンション借りるの際し、汚れるから嫌がられるので絵を描いている事を隠しさえするというどっかの国とは違う。金もうけが上手いばかりが先進国ではあるまいに…。
ともかく日本の住宅は一戸建てでもマンションでも北は台所、風呂、トイレに決まっていて、本格的なアトリエを作ろうと思ったら設計の段階から相応の出えん覚悟でやらねばならず、ガレージや物置をアトリエ代わりにしているという画家も多い。
そういう意味では拙画室は全く「不適格物件」。せめて「我が城」たらんとの工夫は、使い勝手の良い棚や作業台、L字型の東欧風長椅子は全部建築現場から調達した資材による手作り。あるいは雰囲気作り優先で機能性を無視した歪な枯れ枝でつくった作業棚。昼夜一貫の「照明設備」など。
因みに下の写真の右には「古株」の石膏像「闘士」、その上はデッサンの終えたバラが「ドライフラワ-」になるため吊り下げられている。枯れ枝で作った鳥かごには「エッグチョコ」のおまけの鳥がとまり、その下には全身に電飾を巻いた通年クリスマスツリー。「燃えるゴミ」の袋も見える。