「喪失」(GONE) | RIVERのブログ

「喪失」(GONE)


ロンドンから西に約170km離れた、

古代ローマ時代の温泉浴場の遺跡が街の象徴であり、

現在も温泉が湧き、歴史を感じる観光都市バース。


大西洋を望み活気ある港湾都市ブリストルや

なだらかな丘陵地帯の静かな町ミッドサマー・ノートンとは

それぞれ20km程度の距離にあるこのバースで娘と暮らす

モー・ヘイダーの2012年の著作で、

この年に東野圭吾の「容疑者Xの献身」と共にノミネートされた

エドガー賞で長編最優秀長編賞を受賞した作品がこの「喪失」(GONE)


母親を強引に車から蹴落とし、後部座席に乗っていた少女と共に

車を強奪する強引な幼児誘拐事件からスタートし、

連続して発生する類似の幼児誘拐事件の捜査の過程で明らかにされる

この事件の真の意味を読者に徐々に提示していく本作では、

ブリストルの重大犯罪捜査隊のジャック・キャフェリー警部の心の苦悩と

地元エイボン・アンド・サマセット警察潜水捜索隊隊長巡査部長

フリー・マーリーの自らの感性だけを信じて単独で突っ走る豪胆な捜査を

対比させて進行させ、同時に子供を誘拐された両親たちの生き様から

“人間”の本性を捉え読者に開示していく。


結末から逆算して読者をハラハラドキドキさせ、

巧みに読者を追い込んだこの不安感を一挙に解消させてくれるような

正統派のストーリー展開を持つ本作で重要な舞台となるのが、

セパーン川の河口から石炭を運搬するためにかつて使われて、

今では干上がり黒い有害ヘドロが堆積したテムズ・アンド・セパーン運河

2マイルにわたり森と農地の地下深くを通るサバートントンネル。


新婚旅行の地としても有名なコッツウォールズの南端にも位置するこの地域で

発生した事件を軸に、英国の階級制度、家族制度を横糸として構成された

本作は、大都市ロンドンではなくウェールズにも近いイングランド西部の景色と

文化の香り高いエンターテインメント小説として仕上げられている。



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