『海辺の家』(Life as A House)
アメリカの国技“野球”。
数々のドラマを生み出している野球の世界を舞台に、
2000年代初頭、貧乏球団であるが故に、高額な年俸の
選手を雇うことはままならず、年俸はそれほど高くないがユニークな
特徴を持つ選手達を集め、独自の統計的手法・理論で、
金持ち球団を打ち負かす常勝チームを作り上げていった
オークランド・アスレチックスのビリー・ビーンGMをモデルにした、
2011年の映画『マネーボール』(Moneyball)。
見る者を勇気づけ、これからの歩みに背中を押してくれる本作を
プロデュースしたマイケル・デ・ルカが2001年に製作した
『海辺の家』(Life as A House)は人生の終わりに、これまでの
“負け犬”のような生活から訣別し、愛するわが子に男としての
生き方を自分の背中で実践して見せた父親の物語である。
ある事件をきっかけに、ケヴィン・クライン演じる主人公ジョージは、
再婚した妻の住む豪邸でティーンエイジャーに成長した一人息子サムと
眼下に太平洋を見渡せる崖の縁にたつジョージのあばらやで
夏休みを過ごすことを提案する。
人生に対する希望は皆無で、刹那的にその日を生きているサム。
最初は父のぼろ家に住むことに拒絶反応を示していたが、
ジョージが少年の頃に経験した憎悪に満ちた父親の無慈悲な行動を
自分の子供サムに対してだけは繰り返したくないとの思いが徐々に
サムの閉ざされた心を開くようになる。
悲惨な状況でもどこかユーモアのセンスを秘めているケヴィン・クラインの演技、
心に秘めた過去を持つ女性の心理を100%スクリーンの上に投影できる
クリスティン・スコット・トーマスを離婚した妻に配した本作は、
朝日に、夕陽に輝く太平洋を随所に取り込んだ映像が美しい
人間に対する思いやりの心が込められたハリウッド映画であった。
「私は自分を“家”と思ってきた、
住む家が私自身、
小さな粗末な家でも私の家ならそれでいい。
私は今の私でいいのだ。
私は自分の人生を生き、
自分の家を建てた」
完成まで28年かかった自分の家。

