椎鈍 しいにび
12世紀頃に成立したとされる説話集「今昔物語」を
題材として芥川龍之介が1916年に著した歴史小説「鼻」や
「芋粥」。
先日出張の際に、薄くて持ち運びに便利な文庫本の芥川龍之介短編集を
読み返した際、当時の僧侶や侍達の着ていた法衣や着物の色として
今では直ぐにその色のイメージが浮かばない多くの日本の伝統色が
記されているのを再発見した。
例えば、椎の樹皮に含まれるタンニンを活用した染め色「椎鈍」、
淡茶系の色かと思ったが、調べてみると、鈍色(にびいろ)は薄墨色に
青花(露草)を混ぜたような青みの灰色のことを指し、「椎鈍」は
薄紫に少し薄墨を混ぜた赤味の淡紫色だった。
僧侶の帽子の色は「柑子色(こうじいろ)」として、C0:M30:Y70:K4で
表現される、くすんだ彩度の低い赤茶色。
平安装束の水干については「青鈍色」と記され、C:13% M:0% Y:11% K:52%
C13:M0:Y11:K52とやや青みのねずみ色。
僧侶や武士の法衣や着物は高価な染料ではなく、
比較的容易に手に入る天然素材の染料で染められた
“地味”な色であった。
文庫本の表紙に使われている色彩は柑子色に近い。
