バンコック・デンジャラス
この作品を振り返ると、
冷静で完璧な暗殺者を演じようとしていたニコラス・ケイジの暗く
思いつめた表情が、悲劇的なラストを暗示していたと思い当たった。
4つのルール
1) Don’t ask questions
2) There is no right and wrong
3) Don’t take an interest in people outside of work
4) Know when to get out, and walk away rich
質問は無し、善悪は無し、堅気の人々とは関わらない、
引き際を知り、引退後は悠々自適に暮らす。
小さな悪事を日々の糧として、バンコクの底辺で暮らす、自分と良く似た
心情を持つタイ人の若者を初めて自分の弟子にようにして育てる過程で、
仏教国であり、まだまだ貧富の差があるが教育水準の高いタイの
この若者が発したある言葉が、ニコラス・ケイジ演じる暗殺者Joeが
守り通してきた“4つのルール”を破るきっかけとなった。
広いスペースに作られた人工の公園を囲むように、
最先端の建築技術を駆使した高層ビル群が立ち並ぶ
ショッピングセンターやオフィース街を目にすると、
東南アジアの先進国タイの首都バンコクの発展を感じるが、
一方で、
日用雑貨、靴、衣料品、食料品を売る小さな露店が、
さほど広くは無い歩道を挟んで立ち並び、通り抜けるのも困難な程、
人で溢れているアーケードや、
バンコック庶民の台所でもある安くて美味しい小さな屋台が並ぶ路、
そして日が暮れるとネオンが輝き多くの人でごったがえす歓楽街
もバンコクの伝統的な姿。
香港出身の双子の映画監督バン兄弟がタイに移り住んだ後の、
2008年にハリウッド映画として製作した本作は、
殆どのシーンをバンコクで撮影し、庶民の街バンコクが持つ
猥雑な面を敢えて強調することで、
作品全体に弱肉強食の暗黒社会で生きる者の不気味さを漂わせ、
それと対比して先進都市バンコクで慎ましやかに暮らす人の
はかなさ、美しさを描いていた。
チャオプラヤー川を上下する乗り合い定期船から見える
多くの美しい寺院、街のあちこちに点在する伝統的寺院、
香港、ジャカルタ、マニラ、クルアランプールの
どこにもないバンコクの姿は敢えて映像として使わず、
伝統的水上マーケットが並ぶ水路でのチェースはあったが、
ハリウッド映画でありながら、アクション場面では
香港映画の伝統を受け継いだ、
約40億円の製作費をかけた上映時間100分の作品なので
B級とは言えないが、
敢えて言えば、ステレオタイプのバンコクを強調し、
アクションシーンに力を入れた“B級”映画
ともいえようか。
多彩な顔を持つバンコクの一面を観るのも
面白い。</span>

