ボーダーミュージック 夢を忘れない心、新しい世界への跳躍
写真家、ミュージシャン、経営学の博士号を持ち北アイオワ大学で
教鞭をとっていた教授と多彩な顔を持つ
ロバート・ジェームズ・ウォラーは、本作「ボーダー・ミュージック」、
「スローワルツの川(Slow Waltz in Cedar Bend)」
「マディソン郡の橋」、そしてノンフィクションの
「Old Songs in a New Café」と幾つかの著作を
世に出しているが、いずれもその文章は平易で、
素直で読みやすく、豊かな香りを醸し出す大吟醸酒が、
原材料の米を磨いて磨いて丁寧に醸造されるように、
ロバート・ジェームズ・ウォラーは男のそして女の心の奥を
丁寧に探り出し、その思いを達成させる過程で、
生きている事は意味がある事、楽しい事と伝えようとしている。
言葉は意思を伝える道具としての明確な意味をもっているけれど、
音自身や画像はそれを聴く人、見る人のつまり受け取り側の解釈で
かなり自由な理解ができる伝達手段である。
ロバート・ジェームズ・ウォラーの作品は、個人の夢、
理想を内省的に追求する夢を語り、どんでんがえしや奇想天外な
ストーリー展開は無いかも知れないが、
作品全体の雰囲気そして、言葉に込められた思いからは、
お気に入りの音楽、写真から受けるのと同じ心地よいリズムを感じる。
自由で、一人気ままに辺境を旅するような生き方を、
いつも心に持ち続けている“カーボーイ”ジャック・カーマインが、
出稼ぎのカナダから故郷のテキサスの牧場に戻る途中で出会った、
こちらも出稼ぎで、仮の生業としてボール・ダンサーに身を落としていた
リンダ・ロボをその愛情で“自堕落”な生活から抜け出させるきっかけを作り、
そしてまた、ジャックの生き方を知る知人に“自由”な心を取り戻させ、
ジャック自身も理想の女性を愛する事で自分を取り戻そうとする。
随所に登場するニューオーリンズジャズやカントリーミュージック、
聖地のメキシコ国境を、心の遠景として、
ベトナム戦争のある出来事で心を壊された男が常に心に持ち続けている
男としての矜持、そして男と女の精神的な愛が描かれている
1995年の作品。

