「プレミアム10」(NHK)で歌手の視点から描かれた“松たか子”。
映画「HERO」などに出演し、女優のイメージがやや強いですが、
1997年に「明日、春が来たら」で歌手デビューして以来、
リリースしたシングルは20枚に及ぶそうです。
すなわち、2007年で歌手10周年を迎えることになります。

デビュー曲「明日、春が来たら」を作詞したのは、脚本家“坂元祐二”氏。
先日まで放送されていたドラマ「わたしたちの教科書」を手がけた脚本家です。

 明日、春が来たら 君に逢いに行こう
 夕立ちが晴れて時が 止まる場所をおぼえてる?
 (「明日、春が来たら」より)

同曲と一緒に収録された曲は「ずっと…いようよ」。
作詞は松たか子自身によるものです。

 失恋することだってあるよ 落ち込むだけ落ち込んで
 もっといいこと起る時が 太陽と共にやってくる
 一面の星屑が光る 私たちを照らしてる
 輝きつづける星みたいに ずっと私たちもいようよ
 (「ずっと…いようよ」より)

リスナーにとって、曲と同時に思い浮かぶのは、
それを聴いていた当時の記憶かもしれません。
五感の記憶は過ぎ去った季節を瞬時に呼び起こします。
1997年の春、わけあって傷ついていたわたしは、
松たか子の「明日、春が来たら」を耳にするたびに、
当時の胸の痛みを思い出します。

 桜の雨が降る 夢が今虹を越えていく
 あなたは空を行く 私を一人残して
 ありがとうって言ったら 永遠にさよならになる
 果てしないこの旅で どこかいつか会える……
 (作詞:松たか子 「桜の雨、いつか」より)

10年という歳月は、果てしなく長いわけではありませんが、
決して短くもありません。
多かれ少なかれ、ひとつの節目を迎える年月なのでしょう。
得たものと失ったもの。
デビュー曲から10年を迎えた松たか子の歌声には、
その両方が込められているはずです。

 花のように 風のように そのままで胸にあるよ
 戻れるなら 戻れるなら 陽炎のあの日
 どんなふうに 言うのだろう 今君がここにいたら
 いまだ遥か 旅の最中 あの夏は遠く
 (作詞:sunplaza 「花のように」より)

ところで、彼女が歌手としてデビューする前の年、
大河ドラマ「秀吉」に茶々(のちの淀殿)役として出演していました。
茶々は織田信長の妹“お市”の娘。
父は浅井長政ですが、信長を裏切り信長によって殺されてしまいます。
お市はその後、柴田勝家と再婚。
しかし戦乱の悲しき運命か、勝家は賤ヶ岳で秀吉と干戈を交えましたがあえなく破れ、
お市と共に北ノ庄城にてその生涯を終えました。

勝利したにもかかわらず、面白くなかったのは秀吉本人。
密かにお市へ心を寄せていた彼は、
最後までその想いが叶うことはありませんでした。
その替わりと言うべきか、遺子茶々を側室として迎えます。
そして、豊臣家の跡継ぎ“秀頼”を産むのは周知のとおりです。

 このままでいいならね それもシアワセかな
 あなたの夢に かさなってるだけならね
 (作詞:前田たかひろ 「ごめんね。」より)

2007年冬、「プレミアム10」にて、
歌手としての顔を初めて取り上げられたという松たか子。
デビュー当時20歳だったという彼女は、
30歳を迎えていることになります。
1997年からいくつも通り過ぎていった「春」。
これから時代はどう流れ、松たか子はこの先どこへ向かうのでしょう。

 何かを信じ続けて 夢を忘れずにずっと
 あなたが教えてくれた いつの日か思いは叶うと
 涙は風に飛んでく 私の中に残らずに
 淋しさも悲しみさえも 全てを受け入れるのなら
 涙 風に飛んでけ
 (作詞:松たか子 「I STAND ALONE」より)

※画像はシングル「夢のしずく」の松たか子です。