今から7年前の3月。彼らはシングル「Forever Memories」でデビューした。柔らかなメロに乗った慶太の澄み切ったハイトーンボーカルが印象的なこの曲は、聴き手に“w-inds.”というダンス・ボーカルユニットの存在を深く印象付けることとなった。彼らは現在までに23枚のシングルと6枚のオリジナルフルアルバムをリリースしてきているのだが、アルバム曲でのさまざま経験や挑戦に加え、彼ら自身の声やダンスの成長もあり、シングル曲としてリリースされる曲調にも徐々に変化が現れてきたのだ。
「昔は、w-inds.といえば“優しくてメロディアスな楽曲にピュアな歌詞”っていうイメージが絶対だったと思うんですよね。でも、僕の声の成長やメンバー3人の年齢的な成長もあり、アルバムでだんだん大人っぽいコア曲にチャレンジするようになっていったことから、いつしかシングルでも冒険するようになっていき、ここ最近では“昔のw-inds.”の印象をかき消してしまうほど挑戦的なシングル曲もあったりしたんですよ。でも、今回の「アメあと」は久々に“昔のw-inds.”的なピュアな楽曲なんです」(慶太)
久しぶりに歌うピュアな楽曲に少々照れがあったという3人。しかし、彼らは見事にこの曲に描かれた世界観を表現しきっている。「昔は何の迷いもなくピュアな感覚で歌えていたのが、7年もの月日が流れると、純粋無垢で一生生きていくなんて無理なんだっていう人生の掟的な面も見えてくる訳でして(笑)、正直、昔のようにピュアな気持ちでこの曲を歌うことが出来るのかどうかと心配になったんですよ。でも、この曲の持つ純粋さと慶太の歌声を聴いたとき、一気に昔の自分にタイムトリップ出来た感覚になったんです。凄いなって思いましたね、曲の持つ力と慶太というボーカリストの声の力は」(涼平)涼平の言うとり、この曲には、ちゃんと昔の彼らが存在しつつも、積み重ねてきた経験もしっかりと感じ取れる。メロにとことん寄り添って歌う慶太のボーカルと、1音1音の細かい部分にこだわってハモられる涼平と龍一のコーラス。そして、“人生”を歌った歌詞――。純粋無垢でいることだけが美しいことではないと知った者こそが、人の痛みを知っている者こそが歌えるピュアな歌。それが「アメあと」なのである。
「今って、やりきれないと思うことにも首を縦に振らなければいけない世知辛い世の中じゃなですか。僕的にはこの「アメあと」の主人公もそんな日常にちょっと嫌気がさしてるんじゃないかなって思うんですよ。でも、そばに居てくれる愛しい人の笑顔だったり存在だったりが気持ちを強くしてくれるし勇気をくれる。人間ってそれだけで頑張れるし笑顔になれるんですよね。それって凄くピュアなことだと僕は思うんです。「アメあと」は、そんな大切なことを教えてくれる歌だと思います」(龍一)目紛しく過ぎ去っていく毎日。ついつい一番大切なものを見失ってしまいそうになる。辛いことがあったとき、哀しいことがあったとき、この曲を聴いてほしい。雨の後、空気が澄み渡っていつもは見えない遠くの景色まで見えるように、きっと辛いことがあった後は、また1から頑張れるはずだから。そんなとき、この曲をそっと静かに聴いてほしい。2曲目の「One love」はメロディラップが印象的な楽曲だが、夢のために手放してしまった恋を歌ったこの歌詞が、人を愛する純粋な気持ちを歌った「アメあと」とリンクする。そして今回、3曲目にはリズムと同期音が強くぶつかってくる激しめな楽曲「leave me alone」が収録されているのだが、言葉を選ばずにたたみかけられる鬱血する感情が熱く胸を叩く。しかし、そんな中で必死に前向きであろうともがく主人公。彼らはまさに自分たちの言葉としてその歌を叫ぶ。いうなれば「leave me alone」は土砂降りの雨。そんな雨の日があるからこそ、澄み切った空に幸せを感じるというもの。「leave me alone」の先に「アメあと」があるのだ。
降り止まない雨はない。今作はそんな大切なことを教えてくれている1枚だと思う。
デビューから7年。今の彼らだからこそ歌える歌がここにある―――。
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