目が覚めて リビングへ行くと 妻は
仕事に行く支度を始めていた
黒のパンツスーツと 白のブラウスの
コントラスト 髪型も化粧もキマっている
寝惚けまなこの俺には とても 眩しく映る
片や 俺は 間違いなく 髪は あちこち
妖気が立っているだろうし 誰が見ても
ひと目でわかる 寝起きホヤホヤの
シワシワパジャマ
まだ ボーっと 霞がかっている脳を
ゆっくり回転させながら 妻の話しに
耳を傾ける
『今日 式を挙げる3組は みんな 2年越し
なんだよ』
本来なら 2年前に結婚式をあげるつもり
だった 3組 でも コロナの影響で
延び延びになり ようやく 今日という日を
迎えられたと 妻は熱弁している
『この2年の間に お子さんが産まれた
カップルもいるんだよ』
鏡の前で 身だしなみの最終チェックを
しながら 嬉しそうに話す妻
『待ち侘びてただろうなぁ』
俺は少し心配になり
でもさぁ 3組連続だと 体力的に
大変じゃない? 無理しないようにね
『大変は大変だけど … ほら 私たちの
仕事は 幸せのお裾分けが貰えるから』
と 妻は キラキラした目で話す
俺の贔屓目 ではなく 妻が たずさわった
新郎新婦は 間違いなく 幸せな式を
挙げられると 思う
妻の 人の幸せを祝う という気持ちは
職業柄 なんかではない
どんなにギスギスした世の中だとしても
自分が癌で 辛く苦しんだとしても
決して揺らぐことのない
そう 澄み渡った心から 成るもの
きっと 新郎新婦さんたちにも
妻の純粋な気持ちが 届くことだろう
時計を見た妻は 立ち上がり
『じゃあ そろそろ行くね』
玄関で靴を履いた 妻が振り返り
化粧が俺に付かないように 顔を
少し 遠ざけながら ハグをした
この時 いつも思う
見送る って 切ないね
だからって ねぇ今日 休んで 一緒にいよう
なんてセリフは言えるわけがない
こんなに張り切った表情をしている妻
気持ちよく見送ってあげなきゃ
でも やっぱり
切ない
すると 玄関の扉を閉めかけた妻が
『あなた お風呂掃除しといて トイレと
洗面台も あと布団を干して 取り込む
前に パンパンして あっ ヨーグルトとか
食パンとか買い物しといて それと … 』
早く いってらっしゃい (・Д・)