冬休みに入り、諫名は顧問をしている写真部の活動のために学校へ来ていた。諫名は写真のことなど何も知らないがこれも経験だと思い引き受けた。部員たちはそれぞれが好きなように部活に参加している。真面目に取り組む生徒が多く、大会などにも多数出展するなど積極的に活動している。どの生徒の写真も個性があり、諫名は感心していた。

 今年最後の部活の日、諫名は部長をしている生徒からカメラを渡され、「先生も何か撮ってみませんか?」と言われ、備品を借りて気の向くまま葉の落ちた街路樹や野良猫、公園で雪遊びをしている子供などを撮った。技術など持ち合わせていないが、なかなか楽しいものだと感じていた。

 それ以来、諫名はカメラを片手に行動するようになっていた。人物を撮りたいとは思えず、フィルムに収まっているのは風景ばかりだ。それでも諫名はどこか満足感に満たされていくのを自覚していた。

 その日、買い物ついでに外へ出た。雪が降っているため人通りは少ない。何気なく自宅のあるマンション近くの公園へ足を運ぶと、そこには私服姿の壱迦が傘もささずに一人で立っていた。諫名は慌てて彼女を自分の傘へ入れるとその身体は薄着をしていることと雪に濡れたことにより冷たくなっている。マフラーをつけてやり、上着の中へ引き寄せてこれ以上身体を冷やさないようにして自宅へ連れ帰ると壱迦の顔はすっかり青くなっており、急いで風呂へ入れた。一体どれくらい外にあんな格好でいたのだろう。

 諫名の服を借りた壱迦が風呂から出てきたが、髪がまだ乾いておらず、首回りが大きく開いていて鎖骨よりも下が見えかけている。諫名は目のやり場に困り、視線を彷徨わせたがひとまず、彼女の髪を乾かしてやることにした。首元はどうしようもなく、出来る限り視線を向けないことにした。

 いつも数学準備室で過ごしているように珈琲を淹れてやり、服が乾くのを待って壱迦の家まで送っていくことにした。

 壱迦の案内でたどり着いたのは高級マンションだった。そこへ壱迦は当然のように入っていき、一度だけ諫名を振り返るとすぐにエレベータに乗ってしまった。