夏休みと文化祭が終わり、本格的な秋となり、外にいるのは肌寒い季節になった。その日、諫名は職員室で同僚と話をしていた。彼の口から壱迦の名前が出てきて、興味を持ち、先を促すとどうやら壱迦は保健室登校をしているらしかった。自分のクラスの授業は特定のものしか出席しておらず、それ以外の授業のときは大体保健室で過ごしているらしい。学年は2年、クラスは1組、成績は平均的であることが分かった。他の生徒との仲が良好ではないから保健室登校をしているのかと思えば、そうではないらしく、むしろ男女ともに壱迦に対して友好的で、男子からの告白も絶えないらしい。
教師の間では評価が分かれているようだが、諫名にとっては気になる生徒だった。
「壱迦、もうすぐ冬になるし、屋上は寒いだろ?数学準備室なら俺しか使ってないから、気が向いたらおいで。」
屋上で諫名は煙草を吸いながら壱迦に声をかけた。外にいるのはそろそろ辛い季節なのでそう言ったのだ。諫名の言葉に対する壱迦の返事はない。
じっと、秋空を見上げている瞳は何を想っているのだろうか。
壱迦が来ないことは分かっていた。
しかし、言わずにはいられなかったのだ。