ビーム技術とリニアコライダー | 気力・体力・原子力 そして 政治経済

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 (旧有閑爺いのブログ)

 

 今日は三橋氏のブログにリニアコライダーの話が出ていたので、久しぶりに「ビーム技術」について思いつくままに書いてみたいと思います。
 実は、もう4年ほど前ですが「ビーム技術と核技術」という記事をアップしたことがあります。その時はレーザービームと電子ビームを用いたウラン濃縮の話だったのですが、リニアコライダーというのはビームに関してもっとプリミティブな技術が必要となるものです。
 因みに三橋氏のブログでは電子と陽子を衝突させるとの記述なのですが、正しくは電子と陽電子を衝突をさせるようです。なお陽電子は電子の反物質なので、電子と陽電子が結合すると両者の質量が消滅して大きなエネルギーが発生します。

 リニアコライダーそのものは別に珍しくもない装置なのですが、日本が手を挙げようとしているものは極めて高エネルギーの巨大な装置のようです。そこに技術開発の必要性があり、場合によっては試行錯誤が繰り返されるかも知れないのです。
 

 では何故、巨大なリニアコライダーが必要なのかです。直接的には素粒子の解明に必要なのですが、宇宙創成期にあったであろう高エネルギーに近づくことが出来るので、時空の謎にまで迫れると考えているからです。
 このように巨大リニアコライダーには多くの期待が寄せられているのです。

 次にこのリニアコライダーを建設するベースとなる技術についてです。

 まずは粒子発生ですが、自由電子は熱電子放出という形で簡単に空間に発生させることが出来るのですが、陽電子は通常では存在しない反物質なので発生させるのが難しいと思います。一般的には、高エネルギーの電子ビームを重金属に照射して発生させるようです。ベクトルの揃った一定量の陽電子束を安定して発生させるということが目標となるでしょう。

 発生させた粒子は加速する必要があります。すなわち加速器が必要になります。工業用途で使う電子ビームは粒子源とビーム到達点の間に高電圧をかけて電界で加速するものがほとんどで、しかも電界を多段で構成することはほとんどなく単段加速です。
 しかし、それでは限度があるので粒子加速器では電磁界で加速するものとなり、与える加速エネルギーの限界から必然的に多段で加速します。しかも加速電磁界を与えるためには物理的な距離が必要になりますので、計画されているリニアコライダーは全長が約20Kmといわれています。
 この電磁界を供給するものが空洞共振器といわれるものでそれにマイクロ波の電力を供給すればそのマイクロ波電力を電子(あるいは陽電子)が受けて運動エネルギーとなし速度が上がるのです。
 空洞共振器内部ではマイクロ波電流が流れ発熱するので、これを解消する超電導空洞共振器が採用されるようです。三橋氏のブログではこのことを「超電導空間において」という意味不明の解説をしています。
 実は私事になりますが、10年以上も昔、私が雇用延長ということで勤めていた時、この空洞共振器の試作に携わったことがありました。当時はすぐにでもスタートするような雰囲気でしたが、まだ緒についていないようで、政治の怠慢という以外に言いようがありません。

 電子にしろ陽電子にしろ電荷がありますので、粒子間で斥力が働きビームが広がります。このビームの広がりを抑え鋭い細いビームにするのが集束器です。普通は斥力だけに着目すればよいのですが、粒子が速力を得てくると質量が増加するという相対性理論の影響(つまり重力の影響)が出ますので、斥力+重力ということに配慮した集束器だろうと思います。

 最後は放射線防護です。粒子の衝突時にはあらゆるスペクトルの放射線が出ます。おそらく原子力発電所で出ている放射線など足元にも及ばないほど強烈なレベルの放射線が出るものと思われますので、放射線防御も重要な項目だろうと思います。

 以上述べたことは、私の私見であり間違っている部分もあるかもしれませんが、利用する技術は個々には目新しいものはなく、試作試験を重ねていけば必ず建設可能であると思います。
 人類の未来にとって明るい展望が開けるであろうこの設備は、政治の決断により早期に着手すべきだと思います。
 移民の導入や博打場の建設など、ろくでもないことに精力を使うよりはこうしたことに力を注ぐべきです。