2025.10.11@Stockholm🇸🇪


東側諸国へ飛ぶべく、姉御に別れを告げる。


嫁入り前の女性の気高き孤城に男一人乗り込ませてもらったのだから、何かせめて御礼の品を渡さねばなるまい。

僕は義理人情と、なんだか憎めないヤツ的立ち回りだけで6年間のサラリーマンライフを渡って来たような人間なのだ。



うーむ、と少し頭を悩ませた後、花束はどうだろうか、とここで僕の無用なロマンチスト魂が火を吹きそうになる。

ノルウェイもスウェーデンもスーパーの入口に必ず花束コーナーがでんと構えていて、北欧人にとっての花束とは、華金終わりの昭和リーマンにとっての折詰(千鳥足で頭にネクタイを巻いて赤ら顔の会社員が持っている紐向きの箱のアレ)くらい、日常的な手土産たりえるのだと伺えたのだ。




いや、しかし、待てよ、と僕は考え直す。

僕の手から、かのような胸キュンアイテムを渡した日にはコツコツと築き上げて来た我々のプラトニック師弟関係の崩壊は必至、姉御はこれまで可愛い弟分だと思っていた僕をオトコとして意識してしまうに決まっている。


それに、これからの姉御のストックホルムデイズの中で、マヨネーズ漫談以外を繰り出せるスウェーデン男が現れぬとも限らない。

その時、イケメンスウェーデン男に言い寄られた時、僕への未練があっては、足手纏いになってしまうではないか。


僕は気遣いができるオトコなのだ。




結局、ここは無難にいこう、と僕は大量のチョコレートを購入したのだった。




しかし、今にして思えば、僕はチョコレートの胸キュンアイテムとしてのポテンシャルを過小評価していたきらいがある。

今頃、姉御は悶々とした日々を過ごしているのではないか、という気がしないでもない。