代理処罰と国外犯 | 橘 白扇 のひとりごと

代理処罰と国外犯

ペルーのリマ高裁で、日本政府の国外犯処罰規定による訴追を受けて、


2001年群馬県太田市での殺人事件の判決がでたことが、報道されている。


マスコミでは代理処罰という言い方が使われるケースがみられるが、正確さを欠く。



日本の刑法では総則第1章で国外犯を規定している。条文番号だけを表示する。


第2条    すべての者の国外犯


第3条    国民の国外犯


第3条の2 国民以外の国外犯


第4条   公務員の国外犯


第4条の2 条約による国外犯



これらの国外犯に規定する罪を犯した者を各条文に規定する各犯罪の条文に


したがって裁くものである。




世界の各国は、独自に刑罰法規を定め、何を犯罪とし、どのような刑罰を


科すかを規定している。



当然ながらその内容は各国が独自に定めるものであり、必ずしも世界共通


、同一内容とは限らない。




例えば日本では殺人罪につき死刑を科すことができるが、死刑廃止国では


当然、死刑が科されることはない。



裁判を行なう国の刑罰法規、刑事手続きに従って有罪、無罪の判断、量刑が


行なわれる。




代理処罰という表現では、例えば今回のケースで言えばペルーの裁判所が


日本の裁判所の代理として、日本の刑法に従って裁判を行なったかのような


誤解を生じさせるおそれがある。




あくまで、ペルーは自国の国民の国外犯、日本の場合なら刑法第3条、


の規定により裁判を行なったにすぎない。




これは、日本側の要請の有無を問わず、独自の判断で行なわれるのが


原則である。




但し、犯罪に該当するかもしれない事実の有無を日本の通知によらなければ


知り得ないばあいに、知らせ、処罰を要請し、あるいは、条約により身柄の


引き渡しを求めるのは国際共助として行なわれるものである。




誤解を生む、代理処罰といった表現ではなく、国外犯処罰として日本で実行


された犯罪の処罰と説明すべきである。