証拠隠滅の罪と虚偽告訴の罪
証拠隠滅の罪
刑法第7章 犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪
第104条 他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは
変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、
2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
虚偽告訴の罪
刑法第21章 虚偽告訴の罪
第172条 人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、
告発その他の申告をした者は、3月以上10年以下の懲役
に処する。
大阪地検特捜部の前田元主任検事のフロッピーデータ改竄についての
該当すると思われる罪を調べてみた。
虚偽告訴の罪は以前は誣告罪と呼ばれていたものである。
新聞、テレビ等の報道では、専ら証拠隠滅罪がとりあげられている。
虚偽告訴の罪は、警察、検察への告訴、告発につき虚偽のものがあった場合
を想定して規定されていることは明らかである。
警察、検察が虚偽の起訴を行なった場合にその罪を問う条文は存在しない。
そんな事態があってはならないし、起こり得ないものとして、法文化されて
いないものであろう。
今回の郵便不正事件の判決は無罪であり、実害はなかったとはいえ、
事件を捏造して起訴が行なわれたと断ぜざるを得ず、これが検察によるもので
なければ当然虚偽告訴の罪も発生していた可能性がある。
裁判で検察側の主張に基づき有罪となる比率は90パーセントをはるかにこえる。
ただ、検察敗訴も当然ながら存在する。しかし、だからといって検察側が犯罪を
犯した結果でないことは当然のものである。
当然のものであった筈と言い換えざるを得ない結果を齎したのが、今回の事件
である。
このままでは法治国家とは毛頭呼べないのであり、最高検が相当の危機意識
を持ち、行動するのは当然である。
虚偽告訴の罪は、告訴、告発のみならず、その他の申告をも含めているので
あるから、証拠を変造してまで起訴しようとした行為をもって、虚偽告訴を問う
べきであろう。
最初に書いたとおり証拠隠滅と虚偽告訴では、法定刑の軽重に差がある。
どちらを適用すべきか、慎重な議論は必要だが、虚偽告訴罪が一切取り上げられ
ないのは報道の責任でもあろう。