八ツ場ダムを論ずる | 橘 白扇 のひとりごと

八ツ場ダムを論ずる

今日の毎日新聞に 『鳩山政権の課題 八ツ場ダム中止

 

 時代錯誤正す 「象徴」 に 』と題する社説が載せられている。


字数に制限があるためか、少し説明不足の感がある。


使われている数字にも説明不足がある。



そこで、もう少し詳しく論じてみたい。


八ツ場ダム建設計画にいたる沿革からはじめてみる。


1952(昭和27)年のカスリーン台風の被害を受け、この台風級の


水害から守るため治水計画の一環としてダム建設が計画発表された。


我妻川流域の多目的ダム建設計画はそれを遡る1949(昭和24)年


経済安定本部の諮問機関であった治水調査会答申に基づく建設省(当時)


の「利根川改修計画」に端を発している。


当初の計画では、堤高115.0m、総貯水容量73,100,000トンであった。


そして1967(昭和42)年、現在地点にダム建設を決定した。


1986(昭和61)年に基本計画。


1994(平成6)年には最初の道路工事が開始された。


2003(平成15)年、基本計画変更。


概略設計は2005(平成17)年に実施されたものである。



計画変更後の計画総貯水容量  1億750万立米


堤高131m、幅330mである。


当初の建設予算は2,100億円であったがその後4,600億円に


変更されたのは衆知のとおりである。



しかしこの金額には、注記が必要である。


この金額には関連事業や資金手当のための起債に対する利息が


除外されているのである。


水源開発問題全国連絡会による試算だと、関連事業費と起債利息


を含めた合計負担は合計8,769億円に及びます。


言ってみれば4,600億円は自己資金のみで一軒家を経てる時の


建物代であり、庭や車庫、塀などの金額を含んでいないというのと


同様です。またこれがマンションならば管理費が必要ですが、


これについての数字は示されていないことになります。


毎日新聞では維持費を年間10億円弱としていますが、当然ながら


その計算根拠は示されていません。


現在のダムサイト予定地については1970(昭和45)年第65回


国会衆議院地方行政委員会でダムの基礎地盤として極めて不安定


との指摘もありましたが、国交省はその後の地盤調査の結果から


問題なしとしています。


しかし、原子力発電所の地盤調査等の杜撰さからみても、


信頼するに足るかどうかは疑問です。


50年で夏期利水容量は半減し80年でタ゛ムが埋まってしまうという


指摘もあります。


我が国の大型公共事業は計画から完成まで紆余曲折のためか、


当初予算が何度も増額され、完成後も計画・予測通りの効果を


産まないものが、枚挙に暇がないくらい存在する。


車の通らない高速道路、飛行機の飛ばない空港。


どれも借入金の返済や維持のための費用に無駄に税金をつぎ込まざるを


得ないのが現実でしょう。


ダム建設を中止して、過去の支出分を返還したとしても、将来必要となる


起債の返済、利息の支払い、維持費の捻出より得と考えるべきである。


既に投下された金額といわれる3,200億円は8,769億円を基礎として


考えれば、まだ5,769億円が未支出ともいえるのである。


長良川河口堰、諫早湾干拓のように完成しても、当初の目論見と異なり


何らの成果、効果も期待できない、むしろ金食い虫の無用の長物を


つくることを止める事に何の躊躇もすべきではない。