被害者参加制度と証人尋問
これも裁判員制度初適用事例を見て感じた問題点であり、もう一度
あらためて検討する必要があると思われるテーマである。
被害者が近隣と度々問題を起こしトラブルメーカーと呼ばれていた
との被告側の主張に対して、被害者の遺族、長男は捜査段階での
トラブルメーカーであったとの調書を否認し、トラブルはなかったと
主張した点である。
近隣の住民が、犯罪の目撃証人として、法定で証言する際、被害者
がはたしてトラブルメーカーだったか否か、証言を求められた場合に
被害者遺族を、傍聴席ではなく、まさに目の前にして、真実の証言か゜
可能かどうかである。
古来、死者に鞭打つような発言を慎むことが美学とされてきた。
しかし、それが犯罪の原因、一因となっているかも知れない場合にまで
死者を美化することは避けるべき事柄に属する。
例えば証言者自身が被害者とトラブルをかかえていたとしても、自らが
加害者で無い場合にトラブルの存在自体を告白することは、少なくとも
今後も近隣に住み、日常生活のうえで何かとかかわりがある被害者遺族
の意向に逆らうことは、実は非常に困難と言えるのでは無いだろうか。
被害者の遺族が裁判に参加する事によって、真実を見誤る可能性が
あるのでは無いだろうか。
職業裁判官は、教育、訓練によって、証人に対峙できるとしても、素人裁判員が
見分けることが困難な事柄というのも存在するのではないか。
被害者遺族が参加することにより判断が歪められるのならば、より適切な
方法が求められる事になろう。
いずれにしろ、あらためて検討すべき問題点であると思われる。