臓器移植法改正さる
今日7月13日、臓器移植法が改正され、法律上は小児の脳死移植
が可能となった。
脳死移植が増えると予測する報道もあるが、果たして相であろうか。
確かに改正前の法によると本人の書面による提供の意思表示と家族
の承諾を必要とし、15歳以上に限定されていた。
今回の改正により、本人の拒否の意思表示が無ければ、年齢を問わず、
年齢制限なしに提供できる事となった。
しかし、脳死移植は過去12年間で81例のみの実施となっている。
改正前であっても、提供の意思表示をしていたひとの数は、81例にとど
まっていたとは思えない。むしろ家族の承諾が得られず、移植ができなかった
例のほうが多かったのでは無いだろうか。
最近の我が国の状況を鑑みるに、家族愛が極めて濃密となっているように
思われる。
それは、犯罪被害者の遺族が犯人に対して厳罰、極刑を求め、公訴時効の
延長、撤廃を求める姿勢に如実に現れているようである。
我が子の脳死を受け入れ、提供の承諾を容易に与える家族が、目に見えて
増加するとは、とても思えない。
一方に我が子にどうしても脳死移植を必要とする家族があり、他方に我が子
の脳死を受け入れられない家族が存在するという、何とも悩ましい状況に
拍車がかかるだけに終わりはしないだろうか。
臓器移植が必要な親族に優先提供できるという規定にも、問題があろう。
親族の範囲を、民法上の親族とすれば、子供の場合でいえば、その両親
以外の親族が、両親に心理的圧力をかけて、無理やり承諾をせまることも
ありうるものと考えるべきでは無いだろうか。
無論、親族に脳死移植を必要とするひとがいるにも拘わらず、親族以外
に移植されるのは釈然としないものがあるのは、当然と言えば当然でもある。
真意からの承諾を担保する方法が必要であろう。
施行までにはまだ時間がある。啓蒙活動によっては、かえって脳死移植
が減少する可能性もあると思うべきであろう。