やさしい刑法講座……刑罰の本質
犯罪行為に対しては裁判により刑罰が課されます。
刑罰は身体に対するものと、金銭に対するものが有ります。
身体刑は、死刑、懲役、禁固です。労役場留置は少し性質が違います。
金銭刑は、罰金、科料、過料で、お金をもって罪を償うことになります。
刑罰の本質は第一には、犯した行為に対する応報です。
ハムラビ法典でしられる、同害報復がその基本と言えます。
目には目を、歯には歯を、というものです。
犯した犯罪と同程度の刑罰がその報いとして課されるわけです。
死刑は文字通り、生命を持って償うことです。
身体刑の基本は自身体の拘束により自由を制限するところに有ります。
懲役と禁固の差異は、刑務所において、刑務作業といわれる労働を
強制されるかされないかによる区分です。
禁固刑は労働を強制されませんが、志願して労働することが出来ます。
但し一度志願すると、取りやめる事はできないのが原則です。
ただ自由を制限されて何もすることが無い禁固囚は、労働を志願することが
多いのが現実です。
労働には対価が支払われます。
刑務所という拘禁施設に閉じ込め、身体の自由を、ただ拘束しているだけでは
刑期満了まで、無為にすごさせることになり、受刑者の社会復帰を助ける
ことは出来ません。そこで、応報だけではなく、更生のための教育が、刑罰
の第二の目的とされることになります。
更生のための教育により、受刑者に社会復帰の希望を与え、一方では再犯の
防止を図る事が出来ます。
将来への希望を与えることにより、刑務所内の治安の悪化を防ぐ効果も期待
されています。
ただ単に閉じ込めて置くだけでは、刑務所内で荒んだ感情を和らげることは
臨めません。刑期が終了する以前の仮釈放の制度も、更生を期待する立場
からの制度です。
応報一点張りではなく、更生教育も刑罰の目的となっているのです。
罰金などの金銭刑は、被害者にたいする損害賠償とは、少し趣旨が違います。
犯罪によって傷つけられるものを、法益といいますが、これには個人の身体、
生命、財産といったもののほかに、国益といったものも含まれます。
個人に対するだけではなく、国、社会に与えた損害にたいする刑罰と考える事が
出来ます。